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新座長試案に当事者から不安の声も――「多様な」消えるか不登校法案

2016年3月15日11:21AM

超党派議連の立法チーム会合。「いよいよ山場」と挨拶する丹羽秀樹座長(右奥)=2016年2月19日、衆議院第二議員会館。(撮影/池添徳明)

超党派議連の立法チーム会合。「いよいよ山場」と挨拶する丹羽秀樹座長(右奥)=2016年2月19日、衆議院第二議員会館。(撮影/池添徳明)

不登校の子どもたちの学びを支援し教育機会を確保するための法案について、全会派一致での成立を目指している超党派の議員連盟の議論が、紆余曲折を経ていよいよ山場を迎えている。

超党派の「フリースクール等議員連盟」立法チームは、議連が昨年まとめた法案の原案を大幅に変更。立法チーム座長の丹羽秀樹衆議院議員(元文部科学副大臣、自民党)は2月初旬、新座長試案(骨子案)を示した。

新座長試案によると、法案タイトルや条文内容から「多様な」という言葉を削除するとともに、フリースクールや家庭での学習内容を保護者が作成し、教育委員会に提出する「個別学習計画」の規定も全文削除した。学校以外での学習を、義務教育の制度内に位置付ける規定も見送った。

その上で、国や地方自治体は不登校の子どもの学校以外の場での学習活動を支援し、適応指導教室の設置など教育施設充実に努め、学習活動や心身の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるとしている。さらに子どもたちが学校を休む「休養の必要性」も明記する。

法案の当初案に対しては、自民党内から「学校に行かないことを助長するのではないか」「『多様な』ということが強調されると、学校と学校以外の教育の場が対等であるような印象を与える」といった懸念が上がっていた。「個別学習計画」についても、「教育委員会の介入によって子どもや親はますます追い詰められてしまう」との指摘が、与野党の議員や当事者から出されていた。

こうした意見を踏まえて新座長試案が示された。立法チーム事務局長の林久美子参議院議員(民主党)は、「『多様な』という言葉はやはりあった方がいいとの意見が非常に多いので、表題や条文が変わる可能性はある。議論があった個別学習計画は削除し、その代わりに約12万人いる不登校の子どもすべてに対する教育支援の項目を設けた」と説明する。

今後は立法チームで条文審査して修正した後、3月初旬に開く議連の合同総会で意見を取りまとめる。さらに各会派に持ち帰って検討した上で、3月中には国会に提出し、今の通常国会での成立を目指したいとしている。

【「立法化急がず議論を」】

超党派議連の立法チームはこれまでに、フリースクール関係者や不登校の子どもを支援する団体などからヒアリングを重ねたが、新座長試案に対する評価は、関係者の間でも割れている。

当初から法案成立を積極的に推進してきた東京シューレ理事長でフリースクール全国ネットワーク代表理事の奥地圭子さんは、「法案全体として不登校の施策がかなり盛り込まれ、学校復帰の圧力が高まることも懸念される」としながらも、「法案では学校以外の学習活動が認められている。教育委員会と学校とフリースクールの連携した支援がしやすくなる」として今国会での成立に期待する。

不登校・ひきこもりを考える当事者と親の会ネットワーク代表の下村小夜子さんは、「いじめや体罰で傷ついた子どもは、学校から避難して心身の休養と回復を図っている。学校を休めないことに苦しんでいる子どもと、学校を休むことを問題視する教育行政の方向性が一致していない。学校復帰を目指し学校教育を前提とする法案は子どもを精神的に追い詰める」と主張する。

一方、フリースクール・フォロ事務局長の山下耕平さんは、「不登校政策であれば新たな法律は不要で、かえって多様な教育という位置付けは歪められてしまうのではないか。安心して休める学校こそが安心して通える学校であり、すべての子どもに休息を保障することが最重要。立法化を急がず幅広い議論を積み重ねることが必要だ」と訴える。

2月中旬には東京・原宿で、不登校経験者や保護者らが法案に反対する集会を開いた。満席の会場からは新座長試案への疑問や不安の声が相次いだ。

(池添徳明・ジャーナリスト、3月4日号)

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