待機児童を深刻化させるタワーマンション開発は規制を――「民進党」は保育園問題で攻勢
2016年4月11日3:15PM
3月27日に開かれた民進党結党大会で、「保育園落ちた日本死ね」のブログを国会で取り上げた山尾志桜里衆院議員が政調会長に抜擢された。山尾氏は当選2回の41歳。新役員人事を発表した岡田克也代表は記者会見で「将来のリーダーとして育てたい」「保育園問題も抜擢の理由の一つ」と説明。一方の山尾氏も、囲み取材で抱負をこう語った。「保育園問題は原点の一つですからしっかりとやっていきたい」「安倍政権は政治家がやりたいことをやっている。いま求められていることは、国民が教えてくれている。それを謙虚に受け止めて解決していきたい。」。
山尾氏の政調会長抜擢は、「今夏の参院選や次期総選挙で保育園問題を大きな争点にする」との民進党の意思表示といえる。合併直前の15日、民主党(当時)は「待機児童緊急対策本部」(本部長・岡田代表、事務局長・山尾氏)を立ち上げ、子育て中の母親や保育士らからのヒアリングを開始。17日の第二回会合では、湾岸地区在住の母親が地域が抱える問題を次のように訴えた。「1500世帯が入るタワーマンション(中央区の『勝どき ザ・タワー』)が3月完成予定で、待機児童急増で保育園入園がますます厳しくなる。『一階には保育園を作る』といったことを行政として義務付けるべき。行政は住民の転出転入にあうように都市計画や保育園整備計画を立て、マンション開発業者などに対しては罰則規定も設けるべき」。
切実な訴えに対し山尾氏は、「(義務化されている)小・中学校には待機児童はいない」と対比しつつ、「保育園も実態把握に基づいた整備が重要」と応えた。
だが、子育て中の母親の直訴を聞いていた厚労省児童家庭局の朝川知昭・保育課長からは、新自由主義的な大企業優先の回答しか返ってこなかった。会合終了後、「保育園問題を深刻化させるタワーマンションの調査をしないのか。建設計画の総数(棟数)、うち保育園整備が伴っている割合を把握していないのか」「マンション開発業者だけが儲かって建設に伴う社会的責任を果たさなくていいのか」と聞くと、「調査していないし、調査する予定も考えもない」と開き直ったのだ。「マンション規制は国交省の所管。実際の権限や情報(建設計画)を持っているのは自治体だが、厚労省はなかなか指導できる立場にはない。自治体とは話し合いをして、(待機児童の)受け皿拡大について幅広く議論をしている」(朝川課長)。
しかし待機児童急増を招く悪化要因(マンション建設)を放置したまま、受け皿拡大だけを進めるのは不十分だ。そこで「調査しないのか」と再三尋ねると、「意見として承っておきます」「同じことを言わせないでください!」(朝川課長)と逆ギレされた。
厚労省は、自民党が嫌がるマンション規制に踏み込もうとせず、本気で待機児童問題を解決する姿勢が見られない。山尾氏の追及に「ブログは匿名」と受け流していた安倍首相も、保育園問題に火がついた途端、「小規模保育の定員拡大」などの対策をまとめる先頭に立ったが、一皮剥くと、政権トップも厚労省の現場レベルも「口先だけの場当り的対応でお茶を濁す」という実態が透けて見えるのだ。
【保育の定員拡大は問題】
しかし職員の半分近くが保育士でなくても認可を受けられる小規模保育の定員拡大については、「保育の質の低下を招く」と問題視されている。23日に衆議院会館で開かれた「保育園落ちたの私と私の友だちだ。保育士辞めたの私だ。国会大作戦」では、娘を保育事故で亡くした母親が体験談を涙ながらに語り、安全性を犠牲にした安易な規制緩和に釘を刺した。
翌24日には、保育士の待遇改善のために民主党など野党5党が月額の給与を5万円引き上げることなどを柱とする「保育士処遇改善法案」を提出。保育園があっても保育士が集まらない実態を改善する狙いで、ここでも安倍政権との違いを際立たせた。保育園問題は安倍政権と野党が対峙する今国会最大のテーマとなりそうだ。
(横田一・ジャーナリスト、4月1日号)