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与那国島に陸自が配備 本土復帰後、沖縄では初の新設――防衛省の「説明」に食い違い
2016年4月18日2:17PM
沖縄県の先島諸島地域で進められる自衛隊配備問題。与那国島で3月28日、陸上自衛隊沿岸監視部隊が発足し、160人の部隊が編成された。本土復帰後の沖縄県内の基地新設としては初となる。未だ島民の4割は反対しており、地域社会にわだかまりが残る。前日の式典に出席した中谷元防衛相は「与那国への陸自配置は厳しい安全保障の中、防衛空白地域を埋め、防衛力強化を示すもので、大きな意義がある」と隊員らに訓示した。
しかし、3月28日地元『沖縄タイムス』は、式以外の様子もつまびらかに報じた。中谷防衛相は、駐屯地施設内を案内した担当者から地図上で島の位置関係などの説明を受けている最中に、突然〈説明に割って入る形で「南西諸島ってどこまでかな?」〉 と質問。答えも聞かず、地図上の沖縄本島から与那国島までの距離に腕を広げ〈「この距離に本州がすっぽり入る。広いよね」〉 と同意を求めた。すかさず〈周囲から「(南西諸島は)奄美、鹿児島も入ります」〉 と注意を受けると、思わず〈「あっ、鹿児島……」とつぶやいた〉 という。
また、塩満大吾監視隊長は、屋内練習場について「射撃訓練を行なう」と説明。後から、西部方面隊広報が「屋内練習場と説明した」などと答えたが、外間守吉与那国町長は「射撃訓練を行なうとは聞いていない」と首をかしげた。
配備を誘致してきた外間町長は「うれしいが複雑な気持ち。反対住民への丁寧な説明が不十分という感じ」と述べた。
この半面、外間町長は、3月17日、長らく不在となっている副町長に、地方創生人材支援制度を通じて登録のあった30代の防衛省職員を起用する人事案を議会に打診。野党側の反対により提案は取り下げたが、反対派の田里千代基町議は「行政と基地が一体化し、役場の空気も変わる可能性がある」と警戒する。
【東京で配備撤回を要請】
一方、石垣島への自衛隊配備を止める住民の会の下野栄信共同代表ら4人と、止めよう自衛隊配備! 東京行動宮古島実行委員会の清水早子さんら5人は、3月30日、合同で防衛省当局者と面談した。同月26日の市民集会で各地で採択された決議書と、1万1571筆の署名(石垣)を手渡し、計画の全容についてすみやかな情報開示などを求めた。面談には赤嶺政賢氏(日本共産党)、仲里利信氏(無所属)ら沖縄県選出の国会議員5人が立ち会った。
面談では、防衛省が現在候補に上げている各地域について、地下水(宮古)や騒音など、住民の生活環境に与える影響や、有事の際の住民保護への不透明さに対して懸念が噴出した。
保坂益貴整備計画局防衛計画課班長は、配備についてはあくまでも「お願いする立場」としつつ、「市長をはじめとする、土地取得の土地を所有している地権者や関係者方に不都合があるので調整が必要」、両島で開催されていない全住民向けの説明会も「現段階で具体的にいつやるとは言えない」などと述べ、不明瞭な回答に終始した。
また、自衛隊配備の必要性については、「特定の国を対象とするものではない」(保坂氏)と、「仮想敵国」の存在を否定。ところがこれについては、防衛省の見解と違う「説明」がある。昨年7月28日、宮古地区自衛隊協力会が一部住民を対象に行なった「説明」会で、自衛隊沖縄地方協力本部の山根寿一本部長(陸将補)は、〈中国の国防費がこの10年で4倍に伸びていることや、同国の海洋進出を含め領土的な野心が強いことを訴えた〉(『宮古毎日新聞』7月29日、傍点は筆者による)。住民側はこの行動を、いたずらに中国の脅威を煽っているとして問題視。保坂班長は発言を「確認していない」としたが、赤嶺氏は住民が収めた映像をもとに、4月1日の衆議院外務委員会でこの食い違いについて追及した。
一方、30日の夜に東京・中央区で行なわれた「宮古島・石垣島の自衛隊配備を止めよう! 3・30東京集会」(同実行委主催)には、200人超の市民が参加した。
(黒島安央・ライター、4月8日号)
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