北海道補選で与党候補を応援する新党大地鈴木代表を直撃!!――TPPも安保法も自民“鞍替え”
2016年5月9日10:28AM
「野党統一候補の池田まき氏対与党候補の和田よしあき氏」の一騎打ちとなり、参院選やダブル選挙の試金石として全国的に注目される衆院北海道5区補選(4月24日投開票)で、不可解な動きをしたのが地域政党の「新党大地」(鈴木宗男代表)だ。「北海道の農業を守る」などとしてTPP(環太平洋戦略経済連携協定)に反対、安保関連法制も批判してきたのに、今回の補選では和田氏を推薦、安倍政権に“鞍替え”したためだ。
ラストサンデー前日の16日に札幌市で開かれた「新党大地・鈴木宗男北海道セミナー」(年1回の総会)には、たすき姿の和田氏が駆けつけて挨拶。旧民主党を除名された鈴木貴子衆院議員(同党代表代行)、宗男氏らと握手しながら、約1800人の支持者を前に支持を呼びかけたのだ。
なぜ新党大地は、安倍政権批判から与党候補支援へと立場を変えたのか。10日、現地入りした菅義偉官房長官の街宣に耳を傾けていた鈴木氏に「なぜ自民党に鞍替えしたのか」と聞くとこう答えた。「いや、俺は共産党とは一緒にやっていけないという話で。日本はいま、みんな保守の国なのですから」。
今国会で野党が黒塗り文書や西川公也元農水大臣の著書を問題視して安倍政権と激突するTPPについて「TPP反対をしていたのに、賛成の自民党と組むのか」と疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。「TPP交渉はまとまったのだから反対してどうします。(批准反対が)国会を通りますか。反対だけしておっても、(農業の)生産性が上がらないから、(TPPでも)逆に農家がやっていける、中小企業がやっていける、薬剤師の方がやっていけるように、そういう形をとるのが現実的な政治ではないかということです。決まった以上、もうひっくり返りませんよ」(鈴木氏)。
【公明関係者、安保法に懸念】
安保関連法が成立して初めての国政選挙となる今回の補選では、同法が大きな争点になっている。そこで、「安倍政権は立憲主義を破壊している」という野党的な立場から変わった理由について聞くと、鈴木氏はこう説明した。
「選挙で選ばれた国会議員が国会の場で議論をしている。これ以上の立憲主義はないでしょう」「私の考えは『安保法制で地球の裏側まで行きますということは自衛隊の立場からしてあってはならない』ということです。私は、安保法制は(衆院での)強行採決はいけないけれども、参議院の審議で山口(那津男)代表が安倍首相の答弁を引出し、極東に限定となった。あんた方が勉強しないといけないのは、衆議院の審議では地球の裏側に行く話だったが、参議院では地理的限定が入ったことだ」「(首相の)国会答弁ですから、国民に約束したわけですから、私はこれが一番重いものだと思っています」。
しかし実際には、安保関連法制が参院審議で修正されて地理的限定が書き込まれたわけではない。そこで「(憲法学者の小林節慶應大学名誉教授が合憲と評価した)維新独自案のように地理的限定を法案に明記すればいいが、法律で縛ることを安倍政権はしなかった」と指摘したところ、鈴木氏はこう反論した。「『最初から法律で縛るべきだ』という話もあれば、『使う時にきちんと判断する』というのも民主主義の議論の中でやればいい。地球の裏側まで行くことがないことは(首相答弁を引出した)山口代表の質問で決まっている。何も懸念はないと思っている」。
公明党代表の尽力で安保法の懸念は払拭されたとの主張だが、正反対の主張をする公明党関係者もいた。公明党元副委員長の二見伸明氏は「公明党は安倍政権の歯止めになっていない。『地理的限定がかかっている』というのなら周辺事態法で十分。安保法を新たに作る必要はなかった」と反論。17日の札幌での講演でも「苦しんでいる創価学会員は大勢いる。元公明党議員や学会幹部から『今の公明党にはついていけない』という声が出ている」と話した。
新党大地の鞍替えや公明党の対応がどう評価されるのかも、補選を左右する要因となりそうだ。
(横田一・ジャーナリスト、4月22日号)