マイナンバー違憲訴訟本格化――「見直すなら今のうち」
2016年5月10日10:36AM
マイナンバー(共通番号)制度は違憲だと主張して、弁護士と市民のグループが国に対し個人番号の利用差し止めや削除などを求めた訴訟の審理が、各地で本格化している。制度の運用は1月に始まったものの、システム障害が頻発して個人番号カードの交付が滞るなどトラブルは絶えない。不安と不信を背景に原告は増え、8地裁で計485人にのぼる。
昨年12月に東京、大阪、仙台、新潟、金沢の5地裁へ提訴した。3月24日には横浜、名古屋、福岡の3地裁に起こし、追加提訴も行なった。目下の原告は、横浜201人、大阪146人、金沢50人、東京42人など。これまで12月提訴の5地裁で口頭弁論が開かれた。
東京訴訟の第一回は4月12日に東京地裁(江原健志裁判長)であった。冒頭に意見陳述した原告弁護団の水永誠二弁護士は「見直すなら発足したばかりの今のうち。システムがどんどん膨らんでからでは取り返しがつかなくなる」と警鐘を鳴らした上で、制度のリスクである個人情報の漏洩やデータマッチング(名寄せ・突合)、なりすましに対して「国の安全対策は極めて心もとない」と批判した。
原告の元東京都国立市長、関口博さんは「各自治体は福祉、税金など各分野ですでに独自の番号を使用しており、マイナンバーでさらに効率化が図られることはない」と指摘。税理士の佐伯正隆さんは「『官』でさえ時には情報が漏れる。民間の情報は努力しても必ず漏れる。零細な事業者に罰則付きで情報の管理をさせるのは無理がある」と現場の実情を訴えた。
一方、被告の国は答弁書で、請求を棄却するよう求めた。訴状への詳しい反論を5月末までに提出するとしている。
原告弁護団は今後、具体的な事例を挙げて制度の弊害を立証するとともに、違憲の根拠とするプライバシー権について海外の状況も踏まえ論理展開していく方針だ。
(小石勝朗・ジャーナリスト、4月22日号)