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「日本会議」を解剖する
2016年5月25日5:15PM
「右翼の堕落は左翼の堕落によってもたらされた」と、たびたび右派論壇の人から聞かされた。なるほど、左翼と右翼はある意味で切磋琢磨する関係にあり、一方が没落すればライバルの他方もそれに合わせて衰えることは十分ありうる。
しかし、別の視点からも見なくてはならない。左翼の衰退を横目に、左翼の強みであった組織づくりのコツをしっかりとわが物にした右翼団体があった。その事実を忘れてはならないのだ。典型が、いまをときめく「日本会議」である。1997年の創設から約20年。いかに存在感を増したかは、閣僚の大半が「日本会議」と深い関係をもっている事実が明瞭に物語る。安倍晋三首相の強力な応援団であることは多くの人が知るところだ。
この日本最大の右翼団体と称してもおかしくない組織の特徴の一つは、活発に動く地方組織の存在である。自民党を中心に地方議員を取り込み、彼ら、彼女らを窓口にして地方議会に請願や陳情を繰り返す。この“実績”をもとに「日本会議」の要望を国政に反映させる。また、主催する集会に関係者を大量動員し、組織力を実体以上に過大にみせるノウハウももっている。60年代以降、左翼運動が得意にしてきた戦法を下敷きにしているのは間違いない。
「日本会議」のホームページ冒頭には以下のような文章が書かれている。
〈私達「日本会議」は、前身団体である「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」とが統合し、平成9年5月30日に設立された全国に草の根ネットワークをもつ国民運動団体です。
私達の国民運動は、これまでに、明治・大正・昭和の元号法制化の実現、昭和天皇御在位60年や今上陛下の御即位などの皇室のご慶事をお祝いする奉祝運動、教育の正常化や歴史教科書の編纂事業、終戦50年に際しての戦没者追悼行事やアジア共生の祭典の開催、自衛隊PKO活動への支援、伝統に基づく国家理念を提唱した新憲法の提唱など、30有余年にわたり正しい日本の進路を求めて力強い国民運動を全国において展開してきました〉
時代錯誤としかいいようのない「日本会議」には神社本庁やいくつかの宗教団体が関わっている。草の根保守を掲げつつ、安倍政権と二人三脚で改憲を目指すこの組織を過大評価も過小評価もすべきではなく、まずは、その実体を解剖することから始めなくてはならい。『週刊金曜日』はこれまでも同組織を取り上げてきたが、参院選を前に27日号で「日本会議」を特集。さらには単行本化も検討している。(北村肇・『週刊金曜日』発行人)
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