【タグ】植村隆、従軍慰安婦
文藝春秋の植村隆氏名誉毀損訴訟口頭弁論――「捏造」の根拠「一つもない」
2016年6月9日2:21PM
「批判が度を超えていた、のではない。批判の根拠となる事実が一つも存在しないのだ」
5月18日の東京地裁。元日本軍「慰安婦」の証言記事を書いて「捏造」と非難を浴びている元『朝日新聞』記者植村隆氏の代理人・神原元弁護士はこう喝破した。植村氏が、西岡力東京基督教大学教授と『週刊文春』の発行元・文藝春秋に起こした名誉毀損訴訟の第5回口頭弁論。西岡氏側が「捏造と論評する根拠」として挙げた事実の間違いが次々判明した。
代表例が、植村氏が取材した元「慰安婦」金学順氏の経歴について、対日補償請求訴訟の訴状に書いていないことを書いてある、という間違いだ。これは4月22日、札幌地裁で開かれた櫻井よしこ氏らを相手取った名誉毀損訴訟の初の口頭弁論で、植村氏が「訴状にない記述を加えた」と指摘したのと似た間違いである。
西岡氏は『週刊文春』2014年2月6日号で、金氏の経歴について「親に身売りされて慰安婦になったと訴状に書き、韓国紙の取材にもそう答えている」とコメントした。だが、植村氏側は事前提出した書面で、訴状には「キーセン学校に三年間通った」「養父に連れられて中国へ渡った」とあり、韓国紙の報道も「キーセンの検番に売られた」「検番の義父に連れられていった所が華北の日本軍300名余りがいる部隊の前だった」(以上、『ハンギョレ新聞』1991年8月15日)という記述はあるが「親に身売りされて慰安婦になった」とは書かれていないと指摘。
西岡氏側は「捏造」と表現したのは、でっち上げをしたという事実を示す「事実の摘示」ではなく名誉毀損が認められにくい「論評」であるとの立場だ。植村氏側は、仮に「論評」としても前提の事実が間違っているか、真実と信じるだけの根拠(真実相当性)がなく、幅広い論評を認める「公正な論評の法理」でも免責されない、とした。
(佐藤洋子・ジャーナリスト、5月27日号)
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