「軍学共同」反対、「今が正念場」――日本の科学を軍事に売るな
2016年6月23日12:36PM
防衛省が大学・研究機関を軍事研究に誘う制度を昨年度から設けたことに対し、反対の動きが広がっている。5月29日には、「『軍学共同』反対シンポジウム―平和のための学術を求めて」が京都大学で開かれ、日本の科学の軍事化阻止には「今が正念場」との強い危機感が共有された。戦争協力の苦い経験から軍事研究は絶対にしないと誓った科学者の歩み(日本学術会議総会の1950・67年声明)が突き崩されかねないからだ。
シンポは、「安全保障関連法に反対する学者の会」が主催。防衛省による「安全保障技術研究推進制度」に応募する大学も出てきたため、「戦争への反省をもう一度肝に銘じるべき」と開かれた。
防衛省の公募は民生技術の軍事転用と大学・研究機関との連携を戦略的に強化する狙い。対象の研究は「将来の装備品に適用できる可能性のある萌芽的な技術」。武器への利用は明らかだ。15年度は109件(大学関係58件)の応募で、9件(同4件)が採択された。予算は3億円。今年度は6億円に増額された。日本版「軍産学複合体」形成への動きと懸念される。
シンポで基調講演した池内了名古屋大学名誉教授は、防衛省は04年度から民間との「技術交流」を着々と進めており、「軍学共同」では軍事研究の「下請け機関になる」と明言。軍事・民生両用にわたる科学技術協力について、「どこからカネが出ているのかが判断基準だ」と安易な応募に釘を刺した。
また金子元久筑波大学教授は、大学に対する運営費交付金削減による構造的な研究資金不足が「軍学共同」研究にも手を挙げさせる深刻な背景を浮かび上がらせた。
「軍学共同」をめぐっては、大学教授らでつくる2団体が反対の署名運動を展開。4月下旬には、2団体が共同記者会見、大学関係者と科学者に警鐘を鳴らすとともに、安倍政権による武器輸出原則容認が問題の背景にあると指弾した。
(土岐直彦・ジャーナリスト、6月10日号)