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TPP反対で“東北の乱”――野党・市民共闘の成果も

2016年7月26日11:06AM

野党共闘で勝利した舟山康江氏。山形市内にて。(撮影/横田一)

野党共闘で勝利した舟山康江氏。山形市内にて。(撮影/横田一)

7月10日投開票の参院選で、東北6選挙区(1人区)で野党統一候補が自民党候補に次々と競り勝つ“東北の乱”が起きた。全国的には与党勝利だが、東北地方では秋田を除く、福島・山形・宮城・岩手・青森で野党が勝利したのだ。

最も早く当確が出たのは、山形選挙区。3年前に苦杯を舐めた舟山康江元参院議員の返り咲きが確定。万歳三唱の後すぐに記者会見が始まり、舟山氏は「TPPで自民党が変節したことが追い風になったのか」の問いに、こう答えた。「自民党の政権復帰の一つの決め手は、自民党はTPP断固反対を掲げていたこと。私自身でさえ『これでTPPは阻止できた』と思ったが、政権誕生して3カ月で交渉参加に入った。TPP反対に期待して投票した有権者、特に農業関係者の落胆と怒りは大きかったのではないか。やはりウソのない正直な政治でないといけない。諸事情で政策を変更せざるを得ない場合には、正直に認めた上で説明するべきなのに、自民党にはそうした姿勢が全く見えなかった」。

舟山氏支援に回った農協幹部も、同じ見方だ。「この3年間、農村部は良くなるどころか、疲弊している。安倍政権は『農協改革をして強い農業を作る』と言っているが、実際はその逆になっています。選挙戦後半に農村部も盛り上がりましたが、『TPP反対の声はまだまだ強い』と思いました」。今後の活動について舟山氏は「最重要課題はTPPだろう」と指摘し、「先の通常国会では衆議院で議論が途中で終わったので、おそらく秋の臨時国会が正念場になってくる。TPPの様々な問題について、しっかりと政府に対して追及をするつもりです」と意気込んだ。

自民党公認で公明党推薦の月野薫候補と実質的な一騎打ちとなったが、約12万票の大差となった。舟山氏は「中央主導への反発だろう」と分析。「山形から農協解体を進める」という中央の意向を受けて遠藤利明・五輪担当大臣の主導で農協出身者を担ぎ出したが、地元農協は「自主投票」を決めて舟山支持に回る農業関係者も多く、逆に返り討ちにあった形だ。安倍首相や小泉進次郎氏ら大物議員が続々と山形入りをしても、ほとんど効果がなかった。選対本部長の近藤洋介衆院議員は「小泉進次郎マジックの化けの皮がはがれた」と言い切った。

別の支援者は「安倍政治への怒りを東北から全国に広げていきたい」と意気込んだ。TPPとアベノミクスと憲法問題を三大争点と位置づけ、安倍政権を徹底批判して圧勝した舟山氏は次期衆院選勝利のモデルケースになりそうだ。

東京選挙区は前回より枠が1増えて6議席。最後の1議席には、小川敏夫氏(民進)が田中康夫氏(おおさか維新)を制し、滑り込んだ。SEALDsが「3分の2議席の鍵を握る候補者17人」として推し、党や支援団体である連合東京の組織票だけでなく、SEALDsの学生、市民のボランティアら幅広い支持による「総掛かり」の勝利といえよう。一方、7月14日告示の都知事選候補者選びが難航する民進・東京都連会長・松原仁氏はお礼の挨拶で「次の選挙もよろしく」と添えた。意識はすでに都知事選に移っていた。

(横田一・ジャーナリスト、小林和子・編集部、7月15日号)

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