東京都知事選告示、有力3候補がアピール――鳥越氏は宇都宮氏の政策を継承
2016年7月28日6:08PM
東京都知事選(7月31日投開票)が7月14日に告示され、小池百合子・元防衛大臣(衆院議員)と増田寛也・元岩手県知事と共に有力3候補とされるジャーナリストの鳥越俊太郎氏が、新宿駅東南口で第一声をあげた。街宣車の前で民進党や共産党などの野党国会議員との連携をアピールした後、シールズの奥田愛基氏が支援表明。「市民主導の野党統一候補」であることを印象づけたのに続いて鳥越氏がマイクを握り、「住んで良し、働いて良し、環境に良し」とスローガンを紹介した。そして、立候補辞退をした元日弁連会長の宇都宮健児氏の政策を引き継ぐことに関連してこう訴えた。
「宇都宮健児さんの『困ったを希望に変える東京へ』は名キャッチコピー。まさにこれだ。これから出てくる私のチラシにこのキャッチコピーが出てくる」
前回と違って今回、分裂選挙が回避されたのは、「都政をより都民の生活にやさしいものへと転換していく千載一遇の機会」と強調しながら身を引いた宇都宮氏の大局的決断の賜物に違いない。しかも、支援者と一緒に練り上げた政策(「東京変革2016 希望の政策7」)が継承されることも確認していた。13日夜の出馬辞退会見で宇都宮氏は、三つの政策を鳥越氏が継承することを確認したと説明したのだ。
「一つは築地移転問題。11月の豊洲移転に対して築地仲買業者の8割が『豊洲の土壌汚染対策は極めて不十分。築地の方で営業を続けたい』と反対。土壌汚染対策が極めて不十分なので、私たちの政策は『移転をいったんストップして見直しをはかる』。二番目は『東京外環道など道路建設についての見直し』。三番目は『横田基地へのオスプレイ配備反対』。これらについては、13日の鳥越氏との会談の場で(3政策を引き継ぐとの)お答えをいただきました」
すでに鳥越氏は、12日の出馬会見でこの3政策に脱原発を加えた4政策について、宇都宮氏と同じ立場であることを表明。築地移転については次のように述べていた。
「友人のテレビ朝日のモーニングショーの玉川徹君がこの問題に一生懸命取り組んでいまして『鳥越さん、仲買人600業者のうち400業者が反対しています。豊洲の築地市場移転先は、コンクリートを少し浮かしている。もし地震があったら液状化で中から危険物質(汚染物質)などが出てきたときに、それを予想してコンクリートを浮かして打っているのではないか』と言っていました。そういう話を聞くと、必ずしも満点の万歳の移転ではないように思いますので、『もう一度、ちゃんと検討しなければいけないのかな』と思っています」
築地市場移転について鳥越氏は13日の「報道ステーション」でも、「ゼロベースで考えていきたい」と宇都宮氏と同じ考えを表明。「コンパクトでシンプルな五輪関連事業を再度徹底的に見直しをして開催経費を抑える」という五輪事業の見直しでも、宇都宮氏と一致していた。鳥越氏の第一声を聞いた民進党の柿沢未途衆院議員はこう話す。
「政策については白紙状態に近い鳥越氏が、宇都宮氏の具体的政策を引き継げば、非常にいい補完関係になるでしょう」
【政策論争を期待】
一方、自民党への推薦願いを取り下げた小池百合子氏は築地市場移転について、「(移転先の)豊洲の土壌汚染問題を懸念している。情報公開することが第一ではないか。なかなか(豊洲)に移らないのはむしろ後継ぎの問題だと思います」と都庁でのぶら下がり会見で述べた。17日の豊洲での街宣でも演説後に「検討中」と答えただけで、見直しを明言しなかった。
これに対して自民党推薦で東京電力の社外取締役を務めた増田氏からは「築地移転中断」や「脱原発」の発言は出ていない。都知事選の有力3候補の対決構図が見えてきた。「自民党の政策継承の増田氏と小池氏 対 見直し派の鳥越氏」というものだ。選挙戦での政策論争が期待される。
(横田一・ジャーナリスト、7月22日号)