英国「武力行使は最後の手段ではなかった」――日本のイラク戦争検証を問う
2016年8月16日10:52AM
イラク戦争を米国と共に主導した英国で、7月6日に独立の調査委員会が開戦の経緯などを検証した報告書をまとめた。これを受け、日本のイラク戦争検証を問うシンポジウムが16日、東京都内で開催された。
今回、英国のイラク戦争調査委員会がまとめた報告書は、『ハリー・ポッター』シリーズ全巻の2・6倍という膨大な分量で、そのすべてがネット上で公開され、誰でも読める。これに対し、日本では外務省が2012年末に検証結果をまとめたものの、公開されたのは、A4判用紙4枚というわずかなものだった。シンポを主催した、NPO「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、昨年7月に提訴した、外務省検証の全容の公開を求める訴訟について報告。報告書の序文の一部は開示されたものの、検証の項目以外は、真っ黒の墨塗り状態だった。三木さんらは今後も全面的な開示を求め、裁判を続けていくという。
シンポでは、高安健将・成蹊大学教授が、イラク攻撃について「最終手段ではなかった」「国際法の根拠があるとは言えない」などの英国の検証結果を解説。「英国には反省の伝統がある」と語った。『毎日新聞』の笠原敏彦・元欧州総局長は「英米の利益と判断と異なるなら、無条件に支援する必要はないというのが、英国の検証の最大のメッセージ」と指摘した。柳澤協二元内閣官房副長官補は、「自衛隊イラク派遣は、まだ憲法の枠内で歯止めがあったが、安保法制ではそれ以上のことをやろうとしている」「(「武力行使は最後の手段ではなかった」という)英国の検証報告を日本にも置き換えて考えていく必要がある」と、日本でもイラク戦争の教訓から学ぶことが必要だと説いた。
イラク戦争検証は、安保法制や改憲を推し進める、安倍政権の暴走を止める上でも、重要なのだろう。
(志葉玲・ジャーナリスト、7月29日号)