都内の気温低下と湿度維持――イチョウ並木伐採中止を
2016年10月13日5:14PM
東京千代田区一ツ橋の区道「神田警察通り」にある樹齢100年近い(推定)イチョウ並木が伐られようとしている。原因は、自転車道の設置など千代田区による道路改修工事。伐採中止を求める陳情が区議会に複数提出されるなど反対の声が強まっているが、いまのところ区に中止する考えはない。
住民らによると、この区間にイチョウは32本あり幹周り最大2・2メートル。関東大震災(1923年)復興道路の街路樹で、植樹時の樹齢を加えると100年近い。
国立科学博物館名誉研究員、近田文弘氏が衛星画像などを使って分析したところ、一ツ橋のイチョウ並木など樹齢が高く枝葉の量が多い街路樹や植樹帯が、皇居と一体となって気温低下と湿度維持の働きを持ち、東京の中心を潤している。近田氏は「数十年を経た街路樹を切り倒して新しい樹木を植栽するのは大きな誤り」という。
工事区間は、千代田区によると約220メートル。神田警察通り全長約1・3キロメートルを整備するための1期工事。4車線の一方通行道路を3車線に減らし道路両側の歩道を拡幅、自転車の走行空間を確保する。学識経験者や町内会などでつくる「神田警察通り沿道整備推進協議会」(20人)で方向性を定めた。1期工事の総事業費は約2億円で区議会の議決を得ているという。区が7月中旬に着工したところ、反対の声があがり工事は中断している。区道路公園課は区民の理解を得たいとしているが、住民説明会などを開く考えはなく、「区民の代表である区議に十分説明する」と話している。
一方、小枝すみ子区議(ちよだの声)は「イチョウ伐採は区議会に説明がなかった。住民等でつくったガイドラインの図でも伐採はイメージできない。他の道路とあわせ、区は約300本の街路樹を切ろうとしているが、区の魅力を後世に引き継ぐためにも残すべきだ」と話している。
(伊田浩之・編集部、9月30日号)