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都教委では「いじめ防止対策推進法」施行後初のケース――遺族の情報公開請求黒塗り

2016年10月17日12:04PM

聞き取り調査内容のほか、生徒の「友人関係」を示した部分(手前)も黒塗りだ。(撮影/渋井哲也)

聞き取り調査内容のほか、生徒の「友人関係」を示した部分(手前)も黒塗りだ。(撮影/渋井哲也)

滋賀県大津市の中学生がいじめを苦に自殺したことをきっかけに作られた「いじめ防止対策推進法」が施行されて9月末で3年が過ぎた。8月にも青森県東北町の中学男子生徒が「いじめがなければもっと生きていたのにね 残念」などのメモを残し、亡くなった。いじめ自殺は止まない。

昨年9月27日、東京都立小山台高校の男子生徒(当時16歳)が、JR中央線大月駅(山梨県)で電車にはねられて死亡した。

「息子さんは家にいますか?」

母親が異変に気がついたのは当日の夕方。ライン(LINE)のタイムライン内容を見て「心配になった」と友人から電話があった。

何があったのかがわからない中で、母親は、行きそうな場所を探したが見つけることができず、交番に届けた。その夜、「大月駅で事故にあった」との連絡が入り、知人のほか、担任と副校長で車で大月駅に向かった。

1週間後、スマートフォンのバックアップから、母親が内容を見ることができた。亡くなる前、生徒はツイッターに「なんか全部のことにあきらめがついてきました」などと書き残していた。遺書はないが、ツイッターの書き込みやラインのやりとりから、悩みがあったとわかった。

また、親しい友人複数と頻繁にメッセージ交換をしており、生徒は悩みを打ち明けていた。友人からの「君を助けたい」というメッセージも残されていた。

悩みが何かはわからないが、母親は「いじめがあったのではないか」と学校側に相談。「調査をしてほしい」と依頼した。友人らにも話を聞きたいと思ったが、保護者の反対で会えなかった。

【中間報告の要望もかなわず】

文部科学省は、子どもの自殺が起きたときの「背景調査の指針」を作っている。いじめの有無にかかわらず、情報収集と整理、残された子どものケア、遺族との関わりについて通知している。

生徒が亡くなった後、同校では記名式で「心と身体の健康調査」を行なっていた。しかし、いじめについては聞いておらず、結果としていじめに関する回答もなかった。いじめがあった場合、記名式では書きにくい。

学校の調査が不十分と感じた母親は年末、都教委に、同法にもとづく調査を要望した。今年1月に「いじめ問題対策委員会」のもとに「調査部会」が設置された。都教委としては初めてのケースで、いじめの有無や自殺の原因、学校の対応などについて調べている。

母親はこれまで何十回も資料を提出し、聞き取りも行なわれている。教員と、同じクラスの生徒、所属していた部活動の生徒に調査が行なわれた。しかし、母親には現段階で、具体的な内容は知らされることはない。

調査委によっては、遺族がメンバーになり、経過を見守ることができるケースもあるが、ガイドラインはなく、遺族とどのように関わるのかは設置した教委次第だ。

母親は少しでも息子のことを知りたいと情報公開請求をした。すると、調査部会の資料だけでなく、生徒の「性格」を示した資料も、調査の争点との理由で、黒塗りになっている。ただ、亡くなった9月だけでも4回、保健室に行っていることがわかった。「だるい」と訴えていたようだ。

「そのことを教えてくれれば、学校に行かせなかった」

母親は調査部会に対して最終報告が出る前に、「中間報告をしてほしい」とも要望したが、受け入れられなかった。ただ、在校生には再調査が行なわれることになった。

また、事務局の教委と交渉した結果、調査の一部は開示されたが、いじめの有無のほか、他の生徒との関係、将来の進路、または家族のことで悩んでいたか、については知らされなかった。

9月24日。1周忌の式典が都内の教会で行なわれた。都教委や学校関係者、中学時代の友人らが参列した。母親はこの日、学校名を公表した。「息子がなぜ死ななければならなかったのか、学校で何があったのかを教えてほしい」と涙を流した。

(渋井哲也・ジャーナリスト、10月7日号)

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