1人あたり123万円でスリランカへ――“予算消化”で強制送還か
2016年10月19日10:38AM
法務省入国管理局は9月22日、日本に非正規滞在するスリランカ国籍の男女30人をチャーター機で強制送還した。非正規滞在といっても、なかには、スリランカで家族が政治抗争に巻き込まれて殺されたが難民と認められなかった人や、日本に家族を持つ人もいた。
入管は「訴訟や難民申請中の人は含まれない」としているが、「仮放免者の会」によると、訴訟する間もないまま突然強制送還された人が半数以上含まれる。難民不認定処分に対する異議申し立てをしていたが、強制送還前日に申し立ての棄却が通知され、そのまま送還されたというわけだ。本来は、棄却後も6カ月以内であれば難民不認定処分の取り消し訴訟を起こすことができる。しかし、ある送還者は、訴訟をする意思表示をしたが聞き入れてもらえず、羽田空港に連れて行かれ、そのまま送還されたと証言している。同会顧問の指宿昭一弁護士は、「裁判ができるのに、その権利を奪っている」と訴えた。
強制送還は「大量に、確実に、安価に」を名目にして2013年から開始され、今回で5回目となる。同会顧問の高橋ひろみ弁護士によると、難民はチャーター機に乗せられる前までは腰縄を、降りるまでは手錠をされるなど、人道上の問題も多くある。10年には強制送還中にガーナ人男性が死亡する事件が起きた。今回の送還者には、数カ月にわたり体の不調を訴え、治療を受けていた人もいた。
さらに今回の強制送還費用は3700万円で、1人あたり約123万円の計算だ。9月23日付『産経新聞』(電子版)は、「1人あたりの費用は個別送還の場合と大きくは変わらない」との入管の主張を載せた。だが、同会の宮廻満さんは「当初は年3000万円で200人の送還が予定されていた。1人あたり15万円の計算。今回は123万円で、入管の掲げる『安価に』という部分が果たされているのか疑問。予算消化のための強制送還はやめるべき」と話した。
(本誌取材班、10月7日号)