自民勝利の2補選、「連合」配慮で野党共闘後退の民進――支離滅裂な野田幹事長の対応
2016年11月7日3:39PM
衆院2補選(10月23日投開票)で、東京10区では若狭勝氏(自民党公認・公明推薦)、福岡6区でも自民党が追加公認をした鳩山二郎氏(無所属)が当選し、自民党が勝利した。その一方、野党統一候補の民進党公認候補が2人とも落選し、事実上の野党統一候補の米山隆一氏が当選した新潟県知事選(10月16日投開票)と対照的な結果となった。県知事選勝利の勢いを引き継ぐどころか、これまでの野党共闘を後退させて惨敗した蓮舫執行部、特に野田佳彦幹事長と馬淵澄夫選対委員長へ批判が噴出するのは確実だ。
支離滅裂な民進党の対応が露呈したのは、20日の池袋駅前での街頭演説。東京10区の鈴木庸介候補(民進党公認)への応援に4野党幹部が駆け付け、安住淳民進党代表代行、志位和夫共産党委員長、福島みずほ社民党副党首、そして山本太郎自由党共同代表が次々とマイクを握ったのに、肝心の候補者本人が現れなかったのだ。
街宣は17時すぎから約1時間。18時半と19時から民進主催の個人演説会が予定されていたが、その前の街頭演説を早めに切り上げれば池袋街宣への合流は時間的に十分可能だった。あるいは、池袋街宣を終えた3野党幹部が直後の個人演説会を“はしご”することも可能だったが、「池袋以外での街宣は頼まれていない。いろいろ党内事情があるのだろう」(志位委員長)。
なぜ、野党共闘の気運に水を差すチグハグで非礼な対応をしたのか。民進党国会議員だけが次々と登壇した演説会を終えた鈴木候補に聞くと、「他の野党には感謝しているが、池袋街宣に行かなかったのは、政党対政党の戦いではなく、候補者同士の戦いにしたかったため」と述べた。しかし民進党執行部や現場を仕切る都連の意向が働いていないはずはない。民進党事情通はこう話す。「民進都連の松原仁会長は野党共闘に消極的で、執行部の野田幹事長と馬淵選対委員長も同じ立場。前日(19日)の福岡街宣で民進党公認候補と4野党幹部が揃い踏みをしたことに連合が不快感を示し、これを受けて池袋での候補不在の指示が出たと聞いています」。
翌21日に蓮舫代表、22日には野田幹事長が鈴木候補の応援演説をしたが、ここにも他の野党幹部の姿はなかった。自由党の小沢一郎代表が「支持母体の連合が言うことを一から十まで聞くなら出先機関になる」と批判したのは当然だ。
【野党勝利の方程式とは】
安倍政権打倒の阻害要因と化した蓮舫執行部の責任は重大だ。自公にショックを与えた新潟県知事選勝利を補選に活かさないどころか、新潟県民の民意を読み違えた連合に配慮、野党共闘を逆に後退させたからだ。「旧民主党議員を多数落選させたことになる野田元首相が幹事長として再び、安倍政権を喜ばす自虐行為を始めた」と指摘されてもおかしくないだろう。
24日の民進党幹事長会見で「執行部がリーダーシップを取って『(池袋4野党街宣に候補者が)参加するべきだ』となぜ言わなかったのか」と聞くと、野田氏はこう答えた。「候補者を出すか出さないのかは各地域の判断。東京10区の場合は『出るのか出ないのかは地元の陣営が判断をしていい』と指示しています」「『新潟のように野党共闘すべきではなかったのか』という意見でしょうが、『野党共闘がどれくらい効果があるのか』はこれから良く検証していかなければならない」。
独断専行とはこのことだ。9月23日の4野党党首会談では補選と次期衆院選について「できる限りの協力を行う」で一致していたのに、野田氏は都連丸投げで事足りるとし、4野党街宣への候補参加に全力を尽くさなかった。自らの職務怠慢で4野党間の約束を反故にし、民進党への信頼感を喪失させたとも言える。
一方、元経産官僚の古賀茂明氏は、新潟県知事選を踏まえて今後の野党統一候補擁立について、「『民進党や連合とは関係ありません』という候補者を小野党(共産・社民・自由)がまず推して最後に民進党が乗ってくるような形が勝利の方程式になる」と語った。
(横田一・ジャーナリスト、10月28日号)