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自公と維新が狙うIR推進法案審議入りめぐる攻防――「カジノと別物」で突破図る
2016年12月5日10:39AM
カジノを含むIR(統合型リゾート)推進法案をめぐって与野党の対立が激化している。自民党は11月15日、衆院内閣委員会での審議入りを野党に提案したが、民進党は「審議する環境にない」と反対し、共産党なども同調。同委員会の島津幸広衆院議員(共産党)は、こう話す。
「内閣委員会の理事会で突如、維新の議員から『3年間、そのままになっている。そろそろ審議をしてもらいたい』という発言があり、自民の筆頭理事が『提案を受け止めて検討したい』と答えると、公明党の理事も『反対ではない』と述べた。事態は緊迫しています」
しかし3年間でカジノをめぐる状況は一変した。10日の反対集会で鳥畑与一・静岡大学教授は「カジノは斜陽産業になった」と断言した。「(高収益を誇って手本とされた)マカオでさえ2014年後半から収益が、ほぼ半減という状況。米国ニュージャージー州のアトランティックシティーでもカジノが四つ潰れました。トランプ氏もカジノ経営に失敗しています」。
賛成派の特徴は小池百合子都知事(IR推進議連のメンバー)と同様、「カジノとIRは別物」とする詐欺的論法を使うこと(本誌11月4日号)。清水忠史衆院議員(共産党)は先の反対集会で、BS番組で討論をした賛成派国会議員の発言、「この法案は『IR法案』だから『カジノ解禁推進法案』と呼ばないで下さい」を紹介、「賛成派が一番隠したい所」と指摘した。
IRのカジノの床面積は5%程度だが、その収益の大半を叩き出す「収益エンジン」(鳥畑教授)。しかも、ギャンブル依存症の“上客”を呼び込むサービスの提供も大問題だ。「IRはコンプと呼ばれる宿泊費や食費などのサービスを提供します。エンターテインメント施設への招待券、ショッピングモールでの商品券やホテル代値引きによって上客を囲い込む。その結果、IR周辺のホテルやレストランに行くお客さんが減る。アトランティックシティーではレストランが数百軒も潰れました」(同教授)。
結局、IRは「宿泊代込み格安ディズニーランド入場券で子どもと母親が楽しむ一方、ギャンブル依存症の父親が大損、周辺のレストランやホテルなどの売上も減る」という略奪的産業。施設建設を請負うゼネコンや海外カジノ会社は儲かっても、国富流出やギャンブル依存症対策費増や地域破壊の弊害をもたらす“売国奴的政策(商品)”といえるのだ。
内閣委員長を1年半務めた大島九州男参院議員(民進党)はこう振り返る。「あらゆる外国企業がIRの素晴らしさについて説明に来たが、『今だけ金だけ私だけ』という新自由主義にくみすることはできないと拒否。幸い、審議されることはなかった」(10日の反対集会での発言)。
【東京・大阪の連携にらむ】
カジノ推進の急先鋒が維新の会の松井一郎・大阪府知事。「東京オリンピック後の不況をカジノと大阪万博が支える」との旗印の下、カジノ候補地の「夢洲」での大阪万博開催の旗振り役をしている。国民の血税で交通インフラ整備をして大阪万博を開催、跡地に海外カジノ企業が進出する計画だ。
そして松井氏と懇意の菅義偉官房長官(神奈川2区)がこの“売国奴的”巨大事業を後押し、「大阪万博が実現するなら改憲に賛成する」と発言する維新議員も出るほど自民と維新は蜜月関係になりつつある。すでに菅氏の地元・横浜市では、IRの受け皿作りが着々と進んでいる。横浜の反対派はこう話す。「横浜のカジノ予定地は横浜港の山下埠頭で、岸壁の改修で大型船を停めるために135億円の予算を組んで埠頭再整備を推進中。倉庫の移転補償費370億円と地区内の道路整備費120億円と合わせると600億円以上。莫大な予算をかけているのです」。
東京と大阪と横浜の親自民でIR推進の首長と連携しながら、自公と維新が進めようとするカジノ法案に対して民進党の蓮舫代表も野田佳彦幹事長も審議入りに反対。「IR賛成の自公と維新対反対の野党」という構図なのだ。臨時国会での攻防が注目される。
(横田一・ジャーナリスト、11月25日号)
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