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リニアへの3兆円財投のための改正案が可決、成立――法案賛成委員からも懸念の声

2016年12月9日11:25AM

名古屋城に近い「名城非常口」予定地。樹木は伐られ公園の面影はない。(撮影/井澤宏明)

名古屋城に近い「名城非常口」予定地。樹木は伐られ公園の面影はない。(撮影/井澤宏明)

リニア中央新幹線への3兆円の財政投融資(財投)を可能にする(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構法改正案が11月11日、参議院本会議で可決、成立した。JR東海の「全額自己負担」を前提に国が認可したリニア計画への初の公的資金投入になるだけに本格論戦が期待されたが、実質2日間の委員会審議で、全事業費約9兆円の3分の1に当たる巨額融資が決まった。

前日10日の参議院国土交通委員会では参考人質疑が行なわれ、川村晃生・慶應義塾大学名誉教授が「今の文明のレベルは人間の身の丈を超えている。心臓のリズムを超えるようなスピードが果たして人間に幸福をもたらすのかどうか」と述べ、リニア計画の是非を改めて徹底論議することを求めた。

これに対し、石井啓一国土交通相はリニアの意義について「三大都市圏が1時間で結ばれ、人口7000万人の巨大な都市圏が形成される。これによってわが国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図れるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済を発展させる」と従来通りの説明を繰り返すにとどまった。

法案賛成の委員からも懸念の声が次々と出された。民進・野田国義氏は財投改革を振り返りつつ、今回の財投について「先祖返りじゃないかと、これを利用して公共事業等を広げていくんじゃないかと言われている」、維新・室井邦彦氏は「環境破壊がまったくなくこの事業が進むことはあり得ない」、日本のこころ・中野正志氏は東京五輪特需による建設費高騰で事業費は10兆円を超えると指摘し、「第二の国鉄になることを懸念する声もある」と疑問を投げかけた。

一連の議論を通じ、国交省がリニア単独の収支の検証を行なっていないことや、JR東海がリニアへの巨額投資の傍ら、在来線のホームドアの設置を一切行なっていないことも明らかになった。

(井澤宏明・ジャーナリスト、11月25日号)

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