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菅官房長官と松井府知事地元(横浜と大阪)で推進――自民・維新カジノ含むIR法案強行の裏側
2016年12月19日11:28AM
ギャンブル依存症増加や国富流出や地域破壊を招く“売国奴的法案”が、自民党と日本維新の会によってゴリ押しされている。12月2日の衆院内閣委員会で、採決が強行された「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」のことだ。
IR推進の急先鋒が、菅義偉官房長官と懇意の松井一郎・大阪府知事(日本維新の会代表)だ。審議入りに慎重な民進党を「日本のことも考えず、党利党略、個人的な好き嫌いで物事を考える。バカな政党だと思う」と批判しているが、「自民党と維新の“蜜月関係”は、両党の悲願実現の交換条件とみられている」(永田町ウォッチャー)。IR候補地「夢洲」(大阪湾の人工島)は、維新が切望する2025年大阪万博の候補地でもあり、「維新が望むカジノ解禁や大阪万博実現を自民党が後押しする見返りに、安倍政権の改憲に協力してもらう」といった“密約”が交わされているかのようにみえるのだ。
実際、両党の暴走ぶりは常軌を逸している。IR法案は14年6月に1回審議入りしたが、当時の合意事項は、(1)官房長官を含めた内閣委員会所属大臣や国家公安委員長の出席、(2)参考人招致、(3)地方公聴会の実施だったが、「今回まったく満たされず、審議時間はたった5時間33分」と民進党の玉木雄一郎幹事長代理は問題視する。推進派議連が発足して賛否が割れる民進党だが、自民と維新の“暴走審議”には反対。共産党の小池晃書記局長も4日の討論番組で、日本はパチンコなどで世界有数の“ギャンブル依存症大国”で「カジノ解禁で依存症がさらに出てくることを前提に、バクチの寺銭で依存症対策費をまかなうのは本末転倒」と批判すると、社民党の又市征治幹事長も「ゼネコン利権につながって、地域経済を破壊した1987年のリゾート法の二の舞になる」と懸念を表明。自由党の玉城デニー幹事長も「(依存症対策などを列挙した)公明党の付帯決議を議論するべき。参院では拙速な議論を避けるべき」と続いた。
【国富流出招く恐れ】
4野党が足並みをそろえ、政権批判を滅多にしない『読売新聞』を含む主要新聞の社説も反対で一致する中、「IR推進派は利益誘導優先の売国奴紛い」と批判される可能性がある。カジノに詳しい大谷大学の滝口直子教授はこう話す。
「カジノ関連の主な顧客は外国人観光客ではなく、日本人の富裕層。海外のカジノ業界の大物が駆け付けた国際会議では『日本人の富裕層の個人金融資産量』を『日本に出来る推定カジノ施設数(3~10)』で割り、『海外に比べて日本の一つのカジノ当たりの個人金融資産量は突出しているから日本のカジノは莫大な利益が確実』と投資を呼びかけていました」
安倍政権は「IRは外国人観光客を呼び込む成長戦略の目玉」と位置づけるが、今回の法案は「日本人禁止」にはなっていない。国富流出の恐れは十分にある。
菅長官(神奈川2区)の地元への利益誘導の狙いも兼ね備えている。IR推進で連携する林文子・横浜市長は内閣委員会採決に対し、「都心臨海部を活性化、観光MICE(ビジネスイベント)を推進する上で有効な手法と考えている」と発言。候補地の山下埠頭ではインフラ整備がすでに始まっており、港湾荷役会社「藤木企業」の藤木幸夫会長や京浜急行などと菅長官の関係については、「藤木幸夫菅義偉と昵懇の港町横浜のドン」(14年10月号『選択』)で紹介した。
「カジノとIRは別物」とする詐欺的推進論を口にする小池百合子知事も2日の会見で「観光振興にプラス」とIRを再評価。「東京と大阪と横浜が有力候補地」という予測が出始める一方、弊害の国民的議論は皆無だ。カジノの面積はIRの5%程度でも大半の稼ぎを叩き出す「収益エンジン」(鳥畑与一静岡大学教授)で、ギャンブル依存症の父親が大損する傍らで母親と子どもが他の施設で楽しむ構造。国富流出に加え、値引きサービスで周辺のホテルやレストランの経営悪化も招き、巨大ハコモノ建設で工事費高騰に拍車をかける。慎重な国会審議が不可欠だ。
(横田一・ジャーナリスト、12月9日号)
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