【タグ】沖縄と基地
沖縄県民の分断を図る政府の工作に翁長知事が明言――「ヘリパッドは容認できない」
2016年12月20日10:50AM
1年前の昨年12月、辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議が結成され、県内各地域から辺野古ゲート前へ座り込む沖縄県民の抵抗運動はピークに達していた。1週間で5000人から8000人もの一般市民が辺野古新基地建設反対のため工事車両を阻止する現場へと駆けつけたのだ。
年が明けて今年の1月から政府側はこの事態を打開すべく、沖縄県警や公安、内閣情報調査室などを総動員。ありとあらゆる情報を収集していた。県警の公安情報に詳しい関係者によると、政党や労働組合幹部行きつけの飲み屋での張番、反対運動幹部とのオフレコ情報交換など人物像や人間関係など徹底して洗っていたという。
現場での非暴力無抵抗の市民をどのようにしたら分裂させることができるか。政府側も必死だった。前出の関係者は、「辺野古と高江で反対運動に関わる関係者を泳がし、同時に逮捕する。いわば一網打尽にすることで、反対運動は過激な人たちによってつくられていた、という印象操作まで行なうという実に巧妙な罠が仕掛けられていた可能性がある」と指摘した。
今年7月の参議院選挙後、安倍晋三政権は、沖縄に対して無慈悲でひどい仕打ちを行なった。沖縄県民の民意に反し辺野古新基地建設と高江オスプレイパッド設置を同時に強行することで翁長県政と沖縄県民の分断を狙ったのだ。
翁長雄志沖縄県知事の公約は、オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去、辺野古新基地建設断念である。その沖縄『建白書』の理念の実現を支える大きな世論を突き崩すには辺野古と高江の分断工作しかないと、公安と内調関係者は本土機動隊500人を人口わずか150人の沖縄県東村高江地区へ送り込み反対する県民を排除、米軍基地建設を強行した。
辺野古と違い高江は地元の首長が移設に賛成していることも翁長知事側のアキレス腱となっていた。さらに、高江は当初ヘリの使用が想定されていたが、今は最新型の輸送機オスプレイが使用する着陸帯へと変貌してきた経緯もあった。安倍政権が復帰後最大の米軍基地の返還と猛アピールする「北部訓練場の4000ヘクタールの返還式典」も12月22日に迫ってくる。政府関係者によると外務省側も「すでにケネディ駐日大使の日程は押さえてあるから」と、建設を強行する理由を明かした。
このような状況で、11月28日、翁長知事は就任2周年の記者会見を開いた。そこで、「苦渋の選択の最たるものだ。4000ヘクタールが返ることに異議を唱えるのはなかなか難しい」と述べた。高江容認ととれる発言に『沖縄タイムス』や『琉球新報』も翁長発言を批判し県民に動揺が広がった。
翌日、事態は一気に動いた。県警は辺野古ゲート前のテントや沖縄平和運動センター、ヘリ基地反対協議会の事務所など県内8カ所を一斉捜索し抗議する4人を逮捕した。容疑は威力業務妨害だった。「絶妙のタイミングを狙っていた」と県警に詳しい関係者は話した。
【「苦渋の選択」発言の真意】
12月2日、沖縄県内の基地負担の軽減を協議した日米合同委員会(SACO〈沖縄に関する特別行動委員会〉)の合意からすでに20年の時が経過していた。同日、翁長知事は報道各社のぶら下がりに応じ「新辺野古基地は絶対造らせない。オスプレイの配備撤回ということを申し上げていますから、これを必ず実現するという意味で、法廷闘争もありましたし、1日2日ですぐ解決する問題じゃありませんので、こういったことを経ながらオスプレイの飛び交うヘリパッドは容認できないということを言っているわけです」と「苦渋の選択」発言を説明した。
沖縄平和運動センター大城悟事務局長は「いっこうに沖縄県内の米軍基地の整理縮小が進まない現実は、沖縄県内にあるすべての米軍基地返還に移設の条件が付き、それが足かせとなり必ずしも沖縄の負担軽減には繋がっていないからだ。そればかりか機能が強化された新基地がどんどん建設されようとしている。それが問題だ」と矛盾点を突きつけた。
(本誌取材班、12月9日号)
【タグ】沖縄と基地