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国富流出や地域破壊を招くIR法案を強行する安倍政権――“カジノミクス”に野党反発
2016年12月26日11:58AM
「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」の参院採決が翌週に延期された12月8日、衆議院第1議員会館でIR推進議連の総会が緊急で開かれ、代理出席を含めて116名の国会議員と誘致自治体幹部が参加した。
まず下村博文・元文部科学相が「法案成立が自民党執行部の総意」と強調、法案提出者の西村康稔・議連事務局長(自民党筆頭副幹事長)が国会報告、細田博之・議連会長が「経済活性化や雇用のために大切な法案。ギャンブル依存症対策も政府が責任をもって対応する」と説明。続いて北海道、横浜、大阪、長崎の自治体幹部がIR推進法成立を期待するとの声を上げた。
一方の野党は強く反発。野田佳彦民進党幹事長は5日の会見で「6時間の審議はあまりにも異常」と批判、安倍首相の成長戦略の目玉であることから“カジノミクス”という異名をつけ、「恐らく官邸の肝煎り」と対決姿勢を強めた。
7日の党首討論では蓮舫民進党代表が「カジノは新たな付加価値を生み出さない。どこが成長産業なのか、と追及。「カジノとIRは別物」という詐欺的IR推進論を安倍首相から引き出した。「(IRは)統合リゾート施設であり床面積の3%はカジノだが、それ以外は劇場であったりショッピングモールであったり、レストラン。そこに投資があり雇用にもつながる」。
これに対し蓮舫代表は「総施設の売上の大半をカジノが生み出している」と反論。安倍首相が日本人の金融資産を差し出す〝売国奴紛い〟である疑いが浮上した。海外カジノ業者が「投資」(安倍首相)をする場合、リターンが不可欠で、〝稼ぎ頭〟のカジノの収益性が重要だ。今回の法案には外国人制限(日本人入場禁止)が盛り込まれておらず、推進議連の西村事務局長に「国富流出につながる。日本人入場禁止にはしないのか」と聞くと、「(カジノ業者に)しっかり納税してもらいます。マーケットを考えたら、日本人入場禁止はない」と答えた。国富流出が前提になっていたのだ。
「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」代表の新里宏二弁護士は、「IR推進議連が慎重姿勢の公明党の賛成を得るために『日本人入場禁止』を入れることを検討したが、官邸側からブレーキがかかった」と振り返り、こう指摘した。
「賭博解禁という規制緩和で海外からの投資を呼び込むのが安倍政権の成長戦略。狙われているのは、日本人の金融資産なのです」
IR候補地「夢洲」(大阪湾の人工島)は自民と維新が推進する大阪万博の候補地だが、鳥畑与一・静岡大学教授は「夢洲は年間6600万人のIR来場者、うち82%を日本人と想定」と指摘。カジノの儲けで値引きサービスをするIRは周辺から観光客を吸い寄せるため、周辺の商業施設は公平な競争ができず、「米国のアトランティックシティでは周辺のホテルやレストランが潰れた」(鳥畑氏)。
【全国的反対運動も開始】
国富流出や地域破壊などの弊害があるIRというわけだが、阻止を目指す動きも出始めている。
横浜が地元の江田憲司・民進党代表代行は、「菅義偉官房長官と林文子市長が横浜にカジノを誘致しようとしているが、断固反対。来年夏の横浜市長選の大きな争点。『横浜の街を守る』という観点から推進派市長を変えていかないといけない。総選挙でも争点の一つになる」と対決姿勢を露わにした。
サラ金業者への規制強化(法改正)を勝ち取った“弁護士・司法書士軍団”も反対運動を全国展開しようとしている。11日の貸金業法改正10周年記念集会で、先の新里弁護士がカジノ(IR)反対運動を呼び掛けたのだ。すると、「日本退職者連合」事務局長の菅井義夫氏が「高齢者がギャンブル依存症になって年金を取られてしまう。実施法ができるまでに粉砕する」と“宣戦布告”、頑張ろうコールで集会を締めた。「東京で設立決起大会を開き、大阪や横浜や長崎や北海道など誘致自治体を回りたい」(新里弁護士)。
「安倍“売国奴”政権対市民・野党連合」という構図が明確化、今後もカジノ問題から目が離せない。
(横田一・ジャーナリスト、12月16日号)
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