「東進」告発記事の見出し削除命じる――裁判長は検閲官気取りか
2016年12月27日10:08AM
株式会社ナガセがフランチャイズ(FC)方式で運営する特定の「東進衛星予備校」の過酷な労働環境を「私は」という1人称を使って告発した体験ルポをめぐり、東京地裁(原克也裁判長)は11月28日、ナガセが直営・FC方式の両方によって全国で運営する「東進」予備校のすべてかその多くで同様のことが起きているような印象を与える――とする曖昧な理由で、記事を掲載した「マイニュースジャパン」(MNJ)に対して見出し削除と40万円の賠償を命じた。真実性は不問、「印象」で「クロ」と決めつけた。明治政府が政府批判を弾圧した讒謗律さながらの乱暴な判決だ。
問題の記事は、2014年10月にMNJがインターネット上で発表した〈「東進」はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで〉と題する報告。ナガセとFC契約を結んで「東進衛星予備校」を経営する在阪の某企業に就職し、休日もろくにない長時間労働でうつ病を発症した男性の体験記だ。
ナガセは16年1月、この記事が虚偽だとしてMNJに3000万円の賠償などを求める民事訴訟を起こす。「東進」予備校のすべてかその多くで同様のことが起きているかのような印象を与えるが、それは嘘だ――という奇妙な理屈だった。
記事を少し読めば特定の「衛星校」における特定の体験だとはっきりわかるではないか。MNJの反論に、ナガセは見出しだけの削除を求める内容に変更。その見出しも、会話の引用であることを明示しており、やはり、特定の体験だと誤解なく読めるではないかと主張したが、原裁判長らは「印象」を根拠として虚偽認定した。書かれた事実と読み手の内心の「印象」をごちゃまぜにして「適法」「違法」と分ける思想はまさに検閲だ。MNJ側は控訴して争う方針。
(三宅勝久・ジャーナリスト、12月16日号)