大阪市の女児焼死事件――再審無罪で国賠訴訟へ
2017年1月27日12:05PM
「なぜ刑務所に20年も繋ぎ止められたのか、真実を明らかにしたい」。1995年7月に大阪市東住吉区の民家で11歳だった青木めぐみさんが焼死した火事。その事件で、殺人罪などに問われ無期懲役が確定し服役したが2015年10月に釈放されて昨年8月に再審無罪となった母親の青木惠子さん(52歳)が12月20日、国と大阪府を相手どり計約1億5000万円の国家賠償を求めて提訴した。
訴状によれば、娘を助けられなかった失意のあまり自殺まで考えていた青木さんに対して取り調べの警察官は「(当時の事実婚の夫は)お前と共謀した保険金殺人を自供している」「長男(当時8歳)は夫が火をつけるのを見ているぞ」などと嘘を伝えた。さらに、死亡しためぐみさんの写真を見せて「謝らないのか」などと迫って虚偽自白に追い込んだことは違法な取り調べとした。また、青木さんを取り調べた大阪地検の検察官については「内縁の夫の自白の裏付けも不十分で起訴したことは違法」とした。提訴について大阪府警も大阪地検もコメントしていない。
この事件では、めぐみさんが入浴中に自宅に放火した実行犯とされて、青木さんとともに無期懲役が確定後再審無罪になった元事実婚の夫(50歳)が、当時めぐみさんに性的な虐待をしていたとされる。元事実婚の夫は逮捕後の取り調べでそこに付け込まれ「あんなことしていた上、放火殺人をしらばっくれても有罪になったら間違いなく死刑になるぞ」などと脅され、虚偽の自白をさせられた。
青木さんはそうした事実を後に知ったが、「娘の名誉のため」として釈放後も元事実婚の夫の非行を明らかにしていなかった。しかし、国賠訴訟提訴の日に奈良県でめぐみさんの墓参りをした際に「めぐみには申し訳ないけれど、真実を明らかにするために、性的虐待のことを隠さないことにします」などと報道陣に打ち明けて決意を新たにしていた。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、1月13日号)