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小池都知事と安倍首相の“密約説”の信憑性高まる――区長選は知事主役の“茶番劇”
2017年2月20日12:51PM
夏の都議選の“前哨戦”とされる東京・千代田区長選が2月5日に投開票され、現職の石川雅己区長が自民党推薦の与謝野信氏と無所属の五十嵐朝青氏を破り、5選を果たした。1万6371票対4758票とトリプルスコア超の圧勝だった。
小池百合子都知事は告示1週間前の総決起集会で挨拶、告示後も4回も応援に駆け付け、1日の神田淡路町での街頭演説会では区長選を「代理戦争」と断言するなど全力投入状態だったが、「ぶっちぎりで勝利」で都議選に勢いをつけようとする狙いは明白だった。
ただ石川氏の選対内部でも、代理戦争を前面に出す「都民ファーストの会」(小池新党)関係者と、千代田区政が争点という地元支援者の間で意見が食い違い、「選挙戦後半は『都民ファースト』の方は引き揚げていただきました。石川区長も『代理戦争ではない』と否定、小池知事の“代理区長”ではありません」(石川選対関係者)。
与謝野候補の背後で糸引く“守旧派”内田茂都議を成敗する勧善懲悪の時代劇風政治ショーに千代田区長選を仕立てた小池知事は、「私が主役」と勝手に宣言、本来の主役を脇役に押しやったのだ。
「代理戦争」断言には石川氏も困惑。神田淡路町での街宣直後の囲み取材では、「代理戦争を否定していたではないか」「断言の根拠は何か」といった質問を浴びて、「私は知らない。知事に聞いて下さい」と知事発言の釈明に追われた。
与謝野候補も、小池知事の断言を受けて「代理戦争ではない」と明確に否定。選対幹部からも「代理戦争と言って小池知事自身が目立ち、千代田区長選を都議選の踏み台にしたいだけ。『小池知事ファースト』と呼ぶのがぴったりだ」と怒りを露わにしていた。
しかし官邸は、与謝野陣営を全面支援することはなかった。前号で「(小泉)進次郎氏投入は官邸の本気度のバロメーター」と指摘したが、結局、告示日に応援演説をした自民党東京都連の丸川珠代五輪担当大臣(東京選挙区の参院議員)と石原伸晃経済再生担当大臣を超える有名国会議員が千代田区入りすることはなかった。候補者と同世代の佐々木紀衆院議員(石川2区)が現地入りしたが、進次郎氏には遠く及ばなかった。
官邸は、橋下徹・前大阪市長(維新法律政策顧問)や松井一郎・大阪府知事(維新代表)との全面対決を避けた大阪ダブル選挙と同様、小池知事との融和路線を選んだのは間違いない。安倍晋三首相と小池知事会談で流れた密約説(自民党都連とは対決するが、国政選挙では自民党とは対決しない)の信憑性が増したとも言える。
【若狭氏の共謀罪批判と一線】
「東京五輪に向け創設が不可欠」と安倍首相が言い切った共謀罪(テロ等準備罪)に対する小池知事の姿勢も、密約説と符合するものだ。小池知事直系の若狭勝衆院議員(千代田区長選でも2回応援演説)は、「専門家としてこのままでは政府の考えに断固反対!!」と銘打った1月7日のブログで、「(共謀罪は)国民の多くの命をテロから守るためには効果が乏しい」と批判。国際組織犯罪防止条約締結に必要とする政府の説明も「(条約の対象が)不正な『金銭的利益』等に絡む国際組織犯罪の防止」と反論、テロに特化した「テロ未然防止法律」の制定を主張している。
しかし小池知事は4日の「希望の塾」後の囲み取材で、若狭氏のブログについて聞くと、「国政と地方政治は違う。共謀罪は国政の課題」と答え、国政と都政を切り分けた。盟友でテロ対策の専門家でもある若狭氏の主張(「五輪開催口実の共謀罪反対」「テロに特化した法整備をすべき」)に賛同し、五輪開催地のトップとして安倍首相に再考を迫ろうとはしないのだ。
千代田区長選は「表(都政)では対決しながら裏(国政)では手を結ぶ」という小池知事と安倍政権の二枚舌的関係を可視化してくれた。官邸設営容認の“小池劇場”で、守旧派都議を東京大改革派知事が退治するワンマンショーをメディアが実況中継したにすぎないと言えるのだ。
(本誌取材班、2月10日号)
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