2017年度予算案は綻びだらけ(鷲尾香一)
2017年3月1日6:55PM
今国会の重要テーマの一つ、2017年度予算案には、大きな綻びがある。
一般会計の歳出額は97兆4547億円と5年連続で過去最大を更新。原資となる歳入は、税収を16年度当初予算よりも1080億円多い57兆7120億円と見込んでいる。
問題は税収見込み額だ。実は、16年度予算では円高要因から法人税収が伸び悩み、税収不足に陥った。このため、政府は16年度第3次補正予算で、税収を1兆7440億円減額修正、税収不足分は1兆7512億円の赤字国債の追加発行を決めた。
16年度予算で税収不足に陥ったにもかかわらず、17年度予算案は税収増加を前提とした。これでいいのだろうか。
金利低下と円安ドル高効果で企業収益に貢献した「アベノミクス」が、税収を見る限り“曲がり角”を迎えていることは明らかだ。そこに、日本の金融政策を「通貨安誘導」だと批判し、米国企業保護のためドル高をやり玉にあげるトランプ大統領が、文字通り、暴れはじめている。日本企業の収益力は低下するだろう。17年度の税収が16年度を上回るなどというのは「とらぬ狸の皮算用」なのだ。
綻びはまだある。国債関係だ。新規国債発行額は34兆3698億円と16年度を622億円下回り、当初予算では7年連続減少した。また、歳入に占める国債の割合を示す国債依存度は16年度の35.6%から35.3%へ低下する見込みで、財政健全化の建前は何とか取り繕った恰好だ。国債費は16年度より800億円超少ない23兆5285億円に抑制した。
だが、新規国債発行額の減少と国債費の抑制には“カラクリ”がある。
新規国債発行額の減少は、外国為替資金特別会計(以下、外為特会)の運用益を全額、一般会計の歳入に繰り入れたことで実現した。結果、歳入の「その他収入」は16年度を6871億円上回る5兆3729億円が計上されている。
一方、国債費の抑制は、日本銀行が長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和を実施していることで、財務省が16年度に1.6%と想定していた国債の金利を17年度は1.1%に引き下げたことがある。つまり、金利は上昇せず、国債の利払い費が減少するという「皮算用」が働いているのだ。
しかし従来、財務省は金利の急上昇により国債の利払い財源に不足が発生しないように保守的な金利設定を行ない、国債費に余裕を持たせて予算を計上してきた。
その結果、多額の国債費の余剰が毎年度発生し、これが補正予算の財源に充当されていた。だが、17年度予算案では想定金利を引き下げたことで、国債費の余剰は望めなくなった。むしろ、金利が急上昇した場合には国債の利払い財源が不足する可能性すらある。補正予算に使えるだけの国債費の余剰が発生する可能性は潰えた。
さらに、外為特会の剰余金(いわゆる埋蔵金)も当初予算に吐き出してしまったため、補正予算には使えない。もし、年度途中に補正予算を組まなければならないような不測の事態に陥った場合、またぞろ「赤字国債」で資金調達するしかなくなったわけだ。17年度予算案は綻びだらけだ。
(わしお こういち・経済ジャーナリスト、2月17日号)