「えん罪救済センター」副代表が米国の事例を紹介 「被害者は黒人が大半、弁護士は白人女性が多い」
2017年3月9日12:54PM
多方面の専門家の協力による冤罪被害者救済をめざし昨年4月に立ち上げられた「えん罪救済センター」(代表・稲葉光行立命館大学教授)の副代表を務める笹倉香奈甲南大学教授が2月18日、神戸市内で講演、米国事情を紹介し日本での運動の広がりを訴えた。
米国で次々に発覚した冤罪を研究していた笹倉教授は「全米科学アカデミー(NAS)が、2本の毛髪が一致したとされた毛髪鑑定について12%がDNA鑑定で不一致と判明した」としたことを紹介、「毛髪、指紋、筆跡、銃器などの鑑定はもはや科学性に欠ける、と衝撃的な結論を出しました。鑑定人の主観が入り、鑑定人のレベルの低さなどでエラー率も高い、とされました」と話した。
冤罪被害者について「黒人が大半。一方、冤罪を晴らそうとする弁護士は白人女性が多い」とし、狭山事件と同様、社会的に差別されている人が犠牲になることが多いことを紹介した。
「死刑囚の誤判も相次いだ米国ではここ20年で死刑判決も執行も約10分の1に激減したが今後、トランプ政権でどうなるのかわからない」と不安を口にした。
帰国後、学習科学・認知科学が専門の稲葉教授や心理学者の浜田寿美男氏らと立ち上げたプロジェクトについて「まだ取り上げられる事件が少ないですが無償で支援しています。司法関係者だけでなく多方面の専門家と連携していることが強みです。残念ながら法医学の専門家があまり協力してくれないですが、台湾など海外とも連携しているので海外の専門家を呼ぶようなことも考えたい」と話した。
満席の会場では活発な質疑が行なわれ、笹倉教授は「日本の司法について海外の人が一番驚くのは取り調べが20日間にも及び弁護士も立ち会えないこと。録音、録画などによる可視化も万能ではない。取り調べで真実がわかるという発想を変えなくては」と強調した。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2月24日号)