入管が強制送還者を”水増し”――3分の2が対象外の「帰国希望者」
2017年3月23日7:17PM
法務省入国管理局は2月20日から21日にかけて、日本に非正規滞在するタイ、ベトナム、アフガニスタンの男女43人をチャーター機でタイに強制送還した。タイ人以外はタイから本国に送還された。本来、チャーター機での送還は帰国拒否者が対象だが、今回は約3分の2に当たる26人の帰国希望者が含まれていた。“対象外”の帰国希望者を人数に加える形で“水増し”した背景には、チャーター機での送還が思うような成果を上げていないことがある。
チャーター機での送還は「大量に、確実に、安価に」を名目にして2013年からスタート。入管は当初、年間3000万円で200人の送還を予定していた。これは1人当たり15万円の計算だが、実際は14年は1人当たり約125万円、15年は159万円、昨年は約123万円と高額で推移。今回の男女43人の送還費用は約2700万円で、1人当たり約63万円に下がったものの、帰国希望者を抜くと1人当たり約159万円に跳ね上がる。
入管は本誌の取材に対し、帰国希望者もチャーター機に乗せることは「今までも通常やっている」としたが、「仮放免者の会」の宮廻満さんは、「14年にも10人ほどの帰国希望者を乗せたが、その時は人数に入れなかった。昨年は人数に入れたけれども、帰国希望者は30人のうち1人だけだった」と指摘する。だが入管は今回、帰国希望者が大量に含まれているということは当初発表していなかった。宮廻さんは「大量に安価にという部分が実現されていないとの批判を避けるために、帰国希望者も人数に“水増し”したのでしょう」とした。
入管はまた、費用を自分で賄えない帰国希望者もチャーター機に乗せれば、「(送還を)達成できる」と“成果”を強調。これに対し同会の永野潤さんは「入管からの“圧力”により、帰国希望に転じる人も多い」と言う。そして、「今回、日本に25年以上暮らす人や、日本に家族がいる人も強制送還された。明確な人権侵害だ」と訴えた。
(本誌取材班、3月10日号)