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大阪吹田で“偽装マンション”か 工事費用と実態に大きな乖離も審査を通過
2017年5月2日8:28PM
森友学園事件のために目立っていないが、大阪の建築業界で目下、「偽装マンションだ」と言われる物件がある。大阪府吹田市にあるAPM穂波町マンションだ。
この4月からすでに入居者が新生活をはじめているこのマンションのどこが「偽装」なのか。事情を知る人物が語る。
「マンションはAPMという会社が事業主で、建物の建設は大阪市内の業者が受注しました。それで2016年の4月に工事が始まったのです。8月には基礎部分の工事が完了ました」
【不審な金の流れ】
通常、設計会社は設計が完了した時点で「確認申請書」を検査機関に提出し、検査機関の「確認済証」を受領して、業者は工事に着手する。中間・最終検査では、写真やデータが添付された検査書類を検査機関に提出しなければならない。たとえば鉄筋工事なら鉄筋が定められた形に組み合わさっているかを写真とともに証明しなくてはならず、コンクリートならば、一定の品質に達しているかどうかを「カンタブ」と呼ばれる試験紙で計り、塩化物含有量の測定記録とともに提出することが義務づけられている。
今回のケースでいう検査機関とは、建築検査機構㈱(星野寛代表取締役社長)のことである。
先の人物が続ける。
「ところが、途中から不審な動きが起きていました。3億500万円という当初の建設予算がいつのまにか目減りしていたのです。どういうことかと業者がAPMに問い合わせたら、工事実態のない会社に金が流れていたことがわかってきました。あるいは、工事の実態はあっても実際の工事費用よりもはるかに水増しされた額が支払われていたりしていたのです。請負業者からすれば許し難いことでした」
請負業者が取材に応じた。
「こちらはコストをかけてしっかりした建設工事をやってきたわけです。にもかかわらず入るべき金がいつのまにか関係ないところに流れていた。ちゃんとした額をAPMが支払ってくれないのであれば、われわれは撤退するしかないとAPMに迫りました」
【吹田市は無責任な回答】
しかしAPMは支払いに応じなかった。今年に入り、マンションは完成したものの、業者とAPMの話し合いは決裂した。
建設業者は撤退することを決め、提出していた検査書類も回収した。ところが、事態はありえない方向へと進む。物件が検査を通ってしまったのだ。本来、検査書類がなければ、その建物が建築基準法に則った建物であるかどうかを証明する手立てはないはずである。
コンクリの「カンタブ」は、原本でしか証明することができない。上の画像は原本だ。これは業者が所持していたものを小誌が撮らせてもらったものである。
では、建築検査機構が「通過させた」書類は本物なのか?
建築検査機構に「そちらに検査書類はないはずなのに、なぜ審査を通したのか」と聞くと、「守秘義務があるから答えられない」という。
事業主のAPMにも説明を求めたが、「回答はしない」。行政機関である吹田市にも聞いたが、「建築検査機構㈱で審査されていますので、こちらではわかりません」と無責任回答に終始した。
偽装マンションと呼ばれるのも、むべなるかな、である。
(野中大樹・編集部、4月21日号)
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