大阪市がヘイトスピーチ条例で初認定 投稿動画の削除を要請
2017年5月9日10:32AM
大阪市の吉村洋文市長は4月5日、ヘイトスピーチの抑止を目的とする全国初の条例に基づき、ネット上に投稿されたデモ行進や街頭宣伝の動画3件をヘイトスピーチと初認定し、動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営する会社「ドワンゴ」に削除を要請した。3件のうち1件はすでに投稿者が自主的に削除しており、大阪市は残る2件を同社が10日までに削除したことを明らかにした。
市条例が昨年7月に全面施行後、ヘイトスピーチのおそれがあると申し立てがあった26件について市長の諮問機関である審査会が調査・審議し、3月にこれら3件をヘイトスピーチと認定し答申した。それによると、認定されたのは2013年に大阪市内であったデモや街宣を撮った動画3件。いずれも拡声器を用いるなどして在日韓国・朝鮮人を蔑称で呼んだり差別的な意味合いで昆虫にたとえたりして、社会からの排除を煽り脅迫するような呼びかけをしている。審査会はこうした言動が条例で定めるヘイトスピーチの要件に該当すると判断した。デモも街宣も条例施行前だが、動画については施行後も公開されていることから適用対象となった。
大阪市人権企画課によると、審査会の諮問・答申は3段階になる。第1は諮問された申し立て案件を調査・審議してヘイトスピーチかどうか認定、第2は発言者の氏名や発言内容などの公表について、第3は実施した拡散防止措置の内容の公表についてそれぞれ判断する。今回は第1段階だが、ネット上での拡散防止を急ぐため、条例にある市長の緊急措置を適用して削除要請したという。
これらの動画3件の申立者である「ヘイトスピーチを許さない!大阪の会」の文公輝事務局長は「申し立ててから認定まで時間がかかり、その間にも被害が広がっているが、市長が緊急措置で削除要請したことは評価する」と話す。
(平野次郎・フリーライター、4月21日号)