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JR東海が住民無視のトンネル堀削 リニア事業の限界露呈

2017年5月26日11:25AM

リニア中央新幹線の建設を進めるJR東海は、4月27日、2015年末の山梨県側での着手に続き、南アルプストンネルの長野県工区(8・4キロメートル)の掘削を開始した。現場は除山という大鹿村の釜沢集落の川向いの山の麓。長野県内で本体工事にかかる作業用トンネルの掘削は初となる。

しかし、難工事への挑戦にもかかわらず、掘削の連絡が大鹿村や釜沢地区の自治会になされたのは前日。釜沢への通知はメールで1行触れられていただけだ。私は釜沢の隣の上蔵地区に住むが、新聞記者から問い合わせを受けて当日午後はじめて着手を知り、いっしょに現地を見に行った。

掘削現場に通じる道路はゲートができ近づけないため、重機の騒音が響く釜沢集落の林道から急斜面の山中を10分ほど下り、工事現場の対岸に着いた。現場は山肌にトンネルの入り口が据えられていたものの、他に完成した建設物は見当たらない。掘削作業ではなく、川沿いに防音壁を作業員が1枚1枚設置していた。

もともとJR東海が、南アルプストンネルの掘削開始を予定していたのは、上蔵地区の小渋川非常口だ。ところが昨年11月の小渋川現地での起工式では、住民の抗議を受け社長と長野県知事も含め、来賓多数が会場に足止めされた。その上、掘削地の保安林の解除手続きが長引き、解除予定を林野庁が告示したのが今年2月。

それに対し住民から多数の異議意見書が提出されたためさらに遅れ、2番目に掘削する予定だった除山非常口で起工式から半年後の安全祈願祭となった。

現在長野県内で排出される974万立方メートルの残土の最終処分地が決定した場所はなく、今回の着手のあり方そのものが、むしろリニア事業の限界を示している。

南アルプスの自然破壊を懸念する登山者グループは、4月10日に都内で記者会見を開き、3912筆の賛同で工事への反対を表明している。

(宗像充・ライター、5月12日号)

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