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文科相による再調査に対するクリアリングハウスの声明全文
2017年6月9日4:21PM
加計学園問題に関する文書の再調査をうけ、情報公開クリアリングハウスが出した声明は次の通り。
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2017 年6 月9 日
加計学園問題で文部科学省による再調査の実施に対する声明
特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
理事長 三木由希子
当法人は、市民の知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です。
本日、文部科学大臣が加計学園問題に関する文書の再調査を実施することを表明したこと自体は、歓迎しています。加計学園問題は、文書の有無が核心的な問題というより、獣医学部の新設に当たって何があったのかが問題の核心です。一方、政府運営のあり方、それに対する政治的介入問題としては、その事実が記録され行政文書として存在するのか否かは、きわめて重要な核心的問題です。
このような視点から、以下の通り見解を述べます。
1 文科省メールや文書は「行政文書」である
報道や国会で明らかにされた文部科学省メールや文書は、これまでの情報を総合すると公文書管理法及び情報公開法に規定する「行政文書」に該当します。また、該当しないとするには、従来の法解釈を大幅にゆがめる必要があります。
行政文書に該当する根拠は、第一に行政文書の要件である「組織的に用いるもの」との要件を満たしているにほかないからです。これまでの情報を総合すると、(1)メールは十数人に送信されており、明らかに利用状況は組織的に用いられた状態にある、(2)メールに添付されている文書はメールと同様に組織的に用いられた状態にある、(3)そのほかの文書も前川前事務次官ら幹部職員に示されあるいはその内容が共有されており組織的に用いられている状態にある、ということになります。
行政文書の定義には「実施機関が保有しているもの」との要件もあります。メールが職員の個人貸与のパソコンに保存されているものであっても、パソコンは文部科学省の備品であって物理的な支配をしている状態にあり、その中にある行政文書は「実施機関が保有」している状態にあります。また、職員が個人的に庁舎内で管理している文書についても、物理的な支配は及んでおり、いずれも組織共用性のある文書であれば、行政文書としての要件を満たすものになります。
一般的には、「行政文書」に該当するか否かは最終的には司法判断に委ねられており、個人メモに該当するものであっても、その利用形態等の実情や評価によって行政文書に該当する可能性は常にあります。したがって、情報公開請求があった場合は個人メモも含めて存否を確認されていなければならず、本来であれば文科省は同様に今回問題になっている文書も特定をする必要があったものです。
2 審議検討過程情報に該当して不開示とは言えない
2017 年6 月7 日付の朝日新聞によると、文科省幹部が「真偽は言及しないが、内容を見ると、政策調整過程のもので不開示が妥当」と、6 日の民進党の加計学園疑惑調査チームの会合で述べたとされています。公文書管理法は意思決定過程の記録の作成を義務付けていますが、その作成された行政文書の開示・不開示の判断は情報公開法の規定に委ねられています。そのため、仮に行政文書として存在したとしても、情報公開法の規定する不開示理由に該当することを文科省は説明をしているようであります。
文科省の主張する不開示理由は、2 つの規定を念頭に置いているものと考えられます。一つは、審議検討過程情報(5 条5 号)、もう一つは事務事業情報(5 条6 号)です。この二つの規定は、適用に当たって「不当」「適正な遂行」を要件としています。審議検討過程情報は「不当」を要件とし、その趣旨は、開示することの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保への支障が看過し得ないときに不開示とできるというものです。公開することの公益と、不開示とすることにより保護される利益の比較衡量を求めるものです。加計学園問題の文書は、開示することによる公益性が高く、不開示とすることにより守られる利益は、もはや特定の利害や利益に帰するものと言えます。
事務事業情報は「適正な遂行」と「おそれ」を要件としています。「適正な遂行」とは、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量してそう言えるものであることを求める趣旨です。したがって、開示することによる公益性と不開示により保護すべき利益の比較衡量が求められています。加えて支障の「おそれ」とは、確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性を要求しています。加計学園問題の文書は、内閣府と文科省の間の今後の協議といった事務事業への支障という主張が文科省などからされる可能性もありますが、審議検討情報と同様に、開示することによる公益性が極めて高く、不開示とすることにより守られる利益は特定の利害や利益に帰するものと言えます。
さらに、情報公開法7 条は、公益上の裁量的開示を規定しています。不開示情報に該当するものであっても、公益上特に必要な場合は開示ができるというものです。高度な政治的な判断に基づく公益上の開示規定ですので、加計学園問題はまさにこの高度な政治的判断を総理大臣、内閣官房長官、文部科学大臣が行えばよいものです。言い換えると、政治的判断がなされるか否かが最大のポイントとなり、開示しなければそれは情報公開法の規定上できるにもかかわらずそれを行わないという意思表示を総理大臣以下が行ったことの証左となります。
以上のことから、加計学園問題の文書は情報公開法の規定からしても公開可能な行政文書です。
3 文科省が独自に調査をしても信頼できないので、中立的・第三者的調査が必要
加計学園問題の文書をだれが文科省内で持っているのかの調査は、情報提供元を探索する調査活動にもなります。この間、「出所や入手経路が不明」などとして調査を拒み、情報源である出所や入手経路を明らかにすることを暗に求める言説が政権から繰り返されています。今回、再調査に踏み切ることになったのは、問題の文書があるか否かが主たる目的ではなく、誰がリークをしたのかを調査することが主たる目的であることも疑わざるを得ません。
すでに情報公開法の規定との関係で述べた通り、加計学園問題の経緯が明らかになることは公益に資するものであり、そのことを文書を提供することで明らかにした職員を特定し、不利益を与えるような調査を行うことは看過できません。公益通報者保護法が存在し公務員も適用されていますが、刑事罰を伴う違法行為を通報した場合のみ対象としており、法的保護の範囲は極めて狭いものです。加計学園問題に関する通報が、この法的保護の対象となるのかは疑わしいところです。
また、この間の文科省及び官邸の言説を踏まえるならば、総理大臣の指示を受けて調査を行った文科省の調査結果の信頼性は、たいへん低いものになると言わざるを得ません。したがって、中立的・第三者的で、特定の職員に不利益が及ばないような調査を実施するべきです。
4 文書が実在しても真偽は別というのは今いうべきことではない
この間、一貫して政府は総理の意向はなかったとし、政治的介入を否定しています。一方で、文科省文書により明らかにされた事実や文書の存在が問題となっても、一向にその文書の存否すら調査をしようとしなかったという事実があります。この段階で、文書の内容の真偽について述べても、説得力がないばかりか、これまでの言説はその逆のことを指し示していると言わざるを得ません。
少なくとも、文科省も官邸もこの問題の当事者であり、文書の存否や新獣医学部の経緯についての当事者の調査を信頼することできません。前述のとおり、中立的、第三者的調査を通じて、真偽が問われるべきです。それなしには、政府の信頼性の回復にはつながりません。
5 問われているのは政治的介入・関与の記録が残されるのが当たり前といえるか否か
加計学園問題だけでなく森友学園問題も同様ですが、行政に対する政治的介入や関与があった場合、政権や政治家がそれは良くも悪くも当然であるということが言えるのかどうかが、今、問われています。政治的介入を行うが記録に残されると困る、などということがまかり通ることが、公益を大きく損なう政治介入を招き、不公正な政府の原因となります。今、総理大臣をはじめ政権としてこのことに対してどのような考えを持っているのか、そして、国会及び国会議員としてこのことに対してどのような考えを持っているのか、説明し表明すべきです。
6 中途半端な再調査になるなら当法人は訴訟で争う
当法人はすでに、加計学園問題に関する文科省、内閣府、内閣官房における協議記録等の情報公開請求を行い、その後、追加でこの間明らかになったメール等を具体的に特定した情報公開請求も行っています。どのような決定になるのかはしばらく待たなければわかりませんが、不存在および不開示となった場合、あるいは文書が具体的に特定されなかった場合は、ただちに情報公開訴訟を提起し、徹底的に司法の場で争うことをここに表明します。
以上
【参考】情報公開法
(行政文書の開示義務)
6 条 五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
(公益上の理由による裁量的開示)
第七条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。
(編注:丸数字は、(1)などカッコ内数字表記にあらためました)
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