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共謀罪と松本人志(小室等)

2017年6月14日5:58PM

前にも書いたと思うけど、僕の伯父は、あの太平洋戦争で中国に連れていかれ、制圧(?)した村で水たまりに引きずり出した村民の男の首を連隊長が日本刀で切り落とすのを目撃したと僕たちに語った。別の叔父は、東南アジアの雨のジャングルで、濁流に足を取られた戦友の手を必死に摑んだが力及ばず手は離れ、戦友は濁流の中に消えていったと語ってくれた。

戦争体験は僕のところまでは語り継がれている。

フジテレビの「ワイドナショー」を見ていたら、共謀罪について、松本人志の「冤罪事件を生むかもしれないリスクが多少あっても、テロなどの事件を未然に防ぐことのプラスの方が多いような気がする」という発言が飛び込んできた。

事件を未然に防ぐためには冤罪の一つや二つの犠牲はかまわない。この理屈に今の世間は頷く。

街中に無数に設置された防犯カメラで四六時中僕らは監視されているというのに、そのことを気持ち悪いと思わない今の世間。

そう言えば、近所の連帯を表す「向こう三軒両隣」という標語は、戦時中には助け合いの裏に監視し合う機能があったらしい。向こう三軒の密告を促し、反戦思想者や共産党員をあぶりだす機能を果たした。向こう三軒両隣という「世間」が、共産党員ならあぶりだされてもしゃーないやろ、と考えるなら、僕は世間じゃない。

本土決戦まで時間を稼ぐ持久戦としての、その名も「捨て石作戦」。その沖縄戦での沖縄人の死亡者、〈沖縄県出身軍人・軍属(現地召集を受けた正規兵のほか、防衛隊・鉄血勤皇隊など)2万8228人。戦闘参加者(日本軍に協力して死亡した準軍属と認定された人数)5万5246人。一般住民3万8754人(推定)。地上戦域外での餓死者・病死者、疎開船の撃沈による被害なども含めると沖縄県民の犠牲者は15万人とする場合もある〉(ウィキペディア)。

沖縄の犠牲が多少あろうとも本土決戦を未然に食い止めることのプラスの方が多い、と言えてしまえる? たかだか共謀罪をすぐに大げさな話にすり替える、って?でもね一九四一年三月、共謀罪と同じ内容の改正治安維持法が可決されたよね。その年の一二月、日本は真珠湾攻撃を仕掛けて太平洋戦争にまっしぐら。結末は沖縄一五万人の死。「未然に防ぐことの方がプラス」なのは共謀罪でしょ。

どんなに嫌な奴でもひたすら旦那をヨイショし、後ろ向きになったときペロッと舌を出すのが芸人、と聞いたことがある。松本人志さんはどんな芸人かな。同じマツモトさんでもいろんなマツモトさんがいるね、ヒロさん。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、6月2日号)

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