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原子力機構大洗センター、改善されないずさん管理と隠蔽体質
2017年6月28日3:11PM
6月6日午前11時15分ごろ、日本原子力研究開発機構(原子力機構)大洗研究開発センター(茨城県大洗町)の、燃料研究棟108号室で核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業中に、核燃料物質が入ったビニール袋が破け、作業員5人が被曝した。
作業員の汚染検査で5人中3人の鼻腔内からα線(最大24ベクレル)を検出。核燃料サイクル工学研究所(同県東海村)の肺モニタで5人の肺検査の結果、50代の同機構職員の肺から「プルトニウム239が最大2万2000ベクレル検出された」という(10日には「身体の表面に残った放射性物質の影響で本来よりも高い値を計測の可能性」と発表)。
7日には作業員5人(同機構職員2人、請負労働者2人、派遣労働者1人)を放射線医学総合科学研究所(千葉市)に移送し、再除染やキレート剤を飲ませるなどの処置を行なった。12日時点で5人の健康状態は「異常なし」という。
茨城県や大洗町、水戸市など周辺8市町村の職員が7日に事故現場に立ち入り検査し「排気モニタ、モニタリングポストの値に異常がなく、環境への影響は認められない」ことを確認した。茨城県原子力安全対策課は取材に「6日から特段の異常はない」という。同課は事故原因や調査結果や再発防止策を23日までに出すよう同機構に申入書を送った。
同機構は、事故原因は「調査中」と発表。取材に対し「(報道機関の)個別の取材には応じていない。各社ともそうしている。電話取材もお断りしている」と回答を拒否した。
8日に同機構に申し入れを行なった、共産党茨城県委員会の川澄敬子・茨城町議によると「事故のあった燃料研究棟を廃止するに当たり、核燃料の入った缶の数を減らしたいために、他の缶にすき間があれば移し替えようと考えていた。(ビニール袋の)破裂は予想していなかった」と、同機構が回答したという。同センターには安全に作業を行なうためのグローブボックスがあったが、今回の作業では使われず、肺モニタ設備やキレート剤も大洗の同センターにはなかったなど、事故の際の安全対策が不十分だったという。
原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「この件に限らず、原子力機構では放射性物質のずさんな取り扱いが多い。過去に何回も問題になっているのに改善されていない」と問題視。その上で大洗町役場への情報提供が事故発生から約1時間後と遅れたことも「今回に関してもすぐに情報が発表されなかった。その辺は変わっていない」と、同機構の情報隠し体質を批判した。
【水戸市では抗議行動】
同機構水戸事務所と東海第二原発を所有する日本原子力発電茨城総合事務所が入居する「茨城県開発公社ビル」(水戸市笠原町)前で9日夕方、東海第二原発の再稼働に反対する「原電いばらき抗議アクション」の参加者ら20人が抗議活動を行なった。
抗議活動は2012年7月から毎週金曜日に行なわれており、抗議活動メンバーの玉造順一・前水戸市議は「大洗町で被曝者が出た事故は今回で3回目。原子力ムラの中で、福島の原発事故が何の教訓化もされていない」と語った。
一方、事故が起きた大洗町では、同町を舞台のアニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)(注)のファンらが大洗駅で同アニメのグッズを購入していた。同町内の土産物店員は「海水浴客に影響が出ないか心配。『ガルパン』で町が盛り上がり(東日本大震災の)津波被害から立ち直ったというのに」と、海水浴客やアニメファンらの客足が遠のくことを懸念した。同町は全国各地からアニメファンらが「聖地巡礼」名目で観光に訪れるなど、同町の経済活性化に役立っている。
玉造前市議は「茨城の県民生活にとって原子力施設はマイナスでしかない。そろそろ県民も声を上げるべきだ」と脱原発を訴えた。
(注)大洗町の高校を舞台に、戦車を用いた武道の一種「戦車道」に取り組む女子高校生らを描いたアニメ。
(崎山勝功・『常陽新聞』元記者、6月16日号)
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