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大阪高裁が在日女性へのヘイトスピーチをはじめて複合差別と認定

2017年7月12日4:44PM

ヘイトスピーチで精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人でライターの李信恵さん(45歳)が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と桜井誠・元会長に550万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6月19日、大阪高裁であった。池田光宏裁判長は在特会側に77万円の支払いを命じた一審の大阪地裁判決を支持したうえで、ヘイトスピーチが人種差別と女性差別との「複合差別」に当たると初めて認定した。

判決によると、桜井元会長は2013~14年、神戸市内の街頭宣伝で取材に来ていた李さんに対し「朝鮮人のババア」「反日記者」と攻撃したのをはじめ、ネット上で李さんの容姿や人格を貶める発言を繰り返した。原告側はこれらのヘイトスピーチが人種差別撤廃条約や女性差別撤廃条約に抵触する人権侵害であると訴えた。一審判決は人種差別撤廃条約の趣旨に反するとしたものの女性差別には触れなかった。高裁判決は「名誉毀損や侮辱は原告が女性であることに着目し、容姿などを貶める表現を用いており、女性差別との複合差別に当たる」と述べた。

複合差別の概念は、在日朝鮮人やアイヌ民族、被差別部落などマイノリティに対するヘイトスピーチのなかでも特に女性が標的として狙われやすいことから、国連の人権機関が属性差別と女性差別が重なる「マイノリティ女性」の問題として重視している。国連女性差別撤廃委員会は昨年3月、日本政府の報告書を審査する最終見解のなかで、日本社会のマイノリティ女性の人権状況に懸念を示し、複合的差別を禁止する包括的な法の制定や人権状況を監視する独立機関の設置を勧告した。しかも日本政府は勧告に対応した措置について2年以内に情報提供するよう求められた。だが政府の対応の動きは見られず、今回の高裁判決がマイノリティ女性の複合差別を認めたことの意義は大きい。

(平野次郎・フリーライター、6月30日号)

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