【タグ】カジノ
横浜市、「条件付き賛成」林市長3選で気になるカジノ誘致の行方
2017年8月18日12:13PM
菅義偉官房長官(神奈川2区)が安倍晋三首相と一緒に推進するカジノ誘致が争点の「横浜市長選」が7月30日に投開票され、自公推薦の現職林文子氏が、カジノ反対を掲げた元民主党衆院議員の長島一由・前逗子市長と元民進党横浜市議の伊藤大貴氏を破って3選を決めた。都議選で歴史的敗北を喫し、仙台市長選(7月23日)でも野党統一候補に敗れた自民党は3連敗を回避。「横浜市長選 自民 現職勝利に安堵」(31日付『読売新聞』朝刊)となった。
一方、カジノに反対の民進党は自主投票を決定。去年10月の新潟県知事選でも同じく自主投票になったものの、原発再稼働反対の米山隆一知事の応援で蓮舫代表を含めた国会議員が現地入り、自公推薦候補の応援に回る議員は皆無で、実質的な与野党激突となった。
しかし横浜市長選では、民進党の牧山ひろえ参院議員(神奈川県選挙区)や山尾志桜里前政調会長(愛知7区)らが林氏を応援、江田憲司代表代行(神奈川8区)や真山勇一参院議員(神奈川県選挙区)らが共産や自由や社民と共に伊藤氏を応援する分裂状態となり、「カジノの是非を問う与野党激突」の構図が崩れてしまった。
しかも市長選終盤には蓮舫代表が辞任表明し、仙台市長選勝利の勢いを活かすどころか、存在感をほとんど示すことができなかった。
【林氏は曖昧な答えに終始】
野党第1党の迷走に救われたのが安倍自民党だ。林氏が万歳三唱と挨拶と記者会見を終えた後、選挙事務所に現れたのは菅官房長官。自公推薦候補の圧勝を「大変うれしく思い、ほっとしている」と切り出した後、カジノについては次のように語った。
「市長は出馬前の記者会見で『検討していきたい』ということでした。そういう方向で、市長として全体の流れを見ながら方向性を決めていくということだと思います」
しかし、林氏の公約にはカジノについて「依存症対策やIR実施法案など、国の状況を見ながら、市として調査・研究を進め、市民の皆様、市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性決定」と明記、地元の民意の賛同を必要とする「条件付賛成」の立場といえる。
しかも様々なアンケート調査では「横浜市民の圧倒的多数が反対」という結果が出ていた。「全体の流れ」を見ていけば、「カジノ誘致はしない」という結論に至る可能性が高い。そこで菅官房長官に「横浜市民はカジノ反対の声が多いのですが、反対でもやるのですか」と聞くと、「そうですか」と言うだけでカジノ誘致が頓挫しそうな不安の表情を全く見せなかった。林氏からも否定的発言は出なかった。当確後の記者会見で「市民の声をどう聞くのか。住民投票かアンケート調査なのか」と聞くと、林氏は曖昧な答えに終始した。
「まだ、そういうところまで考えに至っていません」
「選挙戦を踏まえた状況を担当と話をしながら検討、決めていきたいと思っています」
不信感が芽生えてきた。年末のカジノ法案成立を評価しながら市長選が近づくと、白紙状態という立場に豹変していった林市長は当選した途端、民意の問い方すら答えない曖昧な姿勢を取り始めた。“菅傀儡市長”とも言われる林氏は結局、市長選向けに慎重派のように振る舞っただけの“隠れカジノ推進派”ではないのか。応援した牧山参院議員に聞いてみた。
「市長選で林さんを応援した仲間、『(民進党の)横浜市総支部協議会』で林市長と面談、カジノについて『市民の声を聞いて決める』と一筆取りました。横浜市民はカジノ反対が多いので、『カジノ誘致はできない』に等しいと思います。林市長は人の話を聞く人で、これまでも無視することはなかった。私は林市長を信じているので、みんなが嫌なこと(カジノ誘致)をやるわけないじゃないですか。(今回の林氏応援は)民進党のカジノ反対の方針と矛盾することはない。ちなみに私はカジノ反対です」
ただ、菅官房長官はカジノ誘致に不安感を全く見せていない。「市民の意見を聞く」と約束した林市長が公約違反をしないのかを、チェックしていくことが不可欠だ。
(横田一・ジャーナリスト、8月4日号)
【タグ】カジノ