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憂慮すべき銀行の“サラ金”化(宇都宮健児)
2017年9月3日3:02PM
深刻化する多重債務問題に対処するため、2006年12月13日、改正貸金業法(貸金業規制法、出資法、利息制限法等の改正法)が成立した。
改正貸金業法では、金利規制と過剰融資規制が大幅に強化された。具体的には、出資法の上限金利が年20%まで引き下げられ、出資法の上限金利と利息制限法の制限金利との間にあった「グレーゾーン金利」が撤廃された。また、貸金業者が利息制限法の制限金利を超えて貸付けをすることも禁止された。さらに、年収の3分の1を超える貸付けを禁止するという総量規制が導入され、過剰融資規制も大幅に強化された。
2010年6月18日に改正貸金業法が完全施行された後は、多重債務者や自己破産申立件数、経済・生活苦による自殺者、ヤミ金被害者、貸金業者数などは大幅に減少してきていた。
ところが2016年の個人の自己破産申立件数は、13年ぶりに増加に転じることになった。自己破産申立件数の増加の背景には、貸金業法の総量規制の対象外となっている銀行カードローンの貸付残高の急増がある。銀行等金融機関には貸金業法は適用されないことになっており、この結果、銀行等金融機関に対しては、貸金業法が定める総量規制は適用されないのである。
最近の銀行のカードローンは、「貸金業法の総量規制適用外」「専業主婦でもOK」「収入証明書不要」「来店不要」「最短即日利用可」などといった、まるで一時のヤミ金の広告を思わせる広告が増えてきている。
銀行カードローンの大半は、プロミス、アコムなどの大手サラ金が保証会社となっており、与信審査も保証会社に委ねる体制となっているところが多い。この結果、大手サラ金を保証会社にした銀行カードローンの貸付額、件数が急増してきている。
銀行カードローンの貸付残高は、この4年間で1・6倍に急増し、2016年末は5兆4377億円となり、サラ金など消費者向無担保貸金業者の貸付残高2兆5544億円を大きく上回っている。
現在、日銀はマイナス金利政策を採用しており、銀行の普通預金金利は年0・001%という超低金利となっている。一方で銀行のカードローンの貸付金利は年14・5%前後であり、利益率も高いので、今後、銀行等金融機関は消費者向けのカードローン貸付けにますます力を入れてくることが予想される。総量規制が及ばない銀行等金融機関の貸出しが増えれば、再び多重債務問題が再燃する虞がある。
そのための当面の対策としては、貸金業法を改正し、サラ金の保証残高を「総量」に算入して規制することが考えられる。
現在のわが国の消費者信用に関する法制度は、サラ金など貸金業者に関しては貸金業法により規制されているが、銀行は銀行法によって規制されることになっている。また販売信用(クレジット)に関しては、割賦販売法で規制されている。
したがってより抜本的には、このような業態別の規制を改め、サラ金・クレジット・銀行を統一的に規制する「統一消費者信用法」の創設が検討されるべきである。
(うつのみや けんじ・弁護士、8月18日号)