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【「香害」最前線】香り空間サービス
日本では雑貨! 精油
皮膚炎やアレルギーを起こすものもある
岡田幹治|2017年9月8日4:44PM
※このシリーズは問答形式にしました。
――精油(エッセンシャルオイル)って何ですか。
植物がつくり出す、揮発性の液体で、多数の化合物が混じった混合物です。1500種類もあって、それぞれが特有の香りをもっています。うち270種類がアロマセラピーで使われています。
水に溶けにくく(疎水性)、アルコールや油脂に溶けやすい(親油性)ので、普通はアルコールやほかの植物油(キャリアオイル)で希釈して使います。
植物の花・葉・根・種子・全体などを、蒸留または圧搾してつくるのですが(注1)、大量の植物からわずかしか採れないので、きわめて高価です(注2)。たとえばバラの精油は約5トンの花から1キログラムの精油しか採れませんし、ラベンダーは150キロから1キロの精油しか採れません(注3)。
精油をマイクロカプセル化する技術が確立されて用途が広がり、香料を含む商品が大量に販売・使用されるようになりました。
――どんな効能があるのですか。
精油に含まれる有効成分には、多様な効能があります。たとえば、▼カモミールジャーマンやサンダルウッドに含まれる「カマズレン」という成分には、消毒・抗炎症作用、▼レモングラスやシトロネラに含まれる「シトラール」という成分には、抗炎症・鎮静作用、▼ユーカリやローズマリーに含まれる「シネオール」には、呼吸器と消化器への刺激作用があるといった具合です。
作用に注目して目的に応じた配合(ブレンド)が工夫され、リラックスしたいとき・憂鬱な気分を明るくしたいとき・ぐっすり眠りたいとき・仕事や勉強に集中したいときなど、目的別にレシピ(手順書)がつくられています。
――本当に効果があるのですか。
科学的に検証されたものは少ないようです。
たとえば、アットアロマ社が明治国際医療大学附属統合医療センターの協力を得て実施した「睡眠にアロマが及ぼす影響についての調査」(注4)をみてみましょう。
この調査は、軽度の睡眠障害をもつ成人男女11人に、心地よい眠りに役立つアロマとして同社が販売している「スリーププラスシリーズ」3種類を使ってもらう方法で実施されました。その結果、72・7%が「睡眠が良くなったと感じる」と回答しました。
しかし臨床試験では睡眠障害に対する効果を断定するには不十分な結果しか得られず、アロマの使用が睡眠感に及ぼす影響は解明できなかったと発表しています。
――精油は天然100%だから安全と思われています。
天然ものだからすべて安全と考えるのは間違いです。精油の中には、▼皮膚炎などを起こす刺激性のもの、▼光に当たると皮膚炎などを起こす光毒性のもの、▼アレルギー反応を起こす感作性のものなどがあります。また、一部の精油を思春期前の男性に投与すると乳房が女性のようになるとの研究も発表されています(注5)。
このほか、医薬品やサプリメントと合わせて摂取すると、薬効低下や副作用をもたらす場合があります。
自然界に存在しているときと比べて何十倍・何百倍に濃縮されていますから、作用は非常に強い。ですから、使用の方法・濃度・用量を守ることが大切で、とくに子どもや妊婦に使う場合は細心の注意が必要です。
――品質はどうなっていますか。
日本で精油は、医薬品でも医薬部外品でもない「雑貨」として扱われており、輸入も販売も自由にできます。信頼できる規格もありません(注6)。合成香料やほかの植物油を混ぜた製品が大量に流通しており、アロマといっても高価なものから100円ショップで売られているものまであります(注7)。(岡田幹治)
(注1)植物から精油を抽出する方法としては、①水蒸気蒸留法、②超臨界流体抽出法、③溶剤抽出法、④圧搾法、⑤低温真空抽出法などがある。
(注2)1ミリリットル(約20滴)当たり、ユーカリやイランイランは150円前後だが、ローズオットーは5000円前後もする。
(注3)アロマセラピーの普及と香料需要の拡大で精油の生産が急増し、原料植物の乱獲やプランテーションの自然破壊が問題になっている。たとえばローズウッドは絶滅の危機に瀕している。
(注4)アットアロマ社の調査データ(2012年7月19日発表)。
(注5)ラベンダーオイルとティーツリーオイルを思春期前の男性に局所投与した場合、乳房が女性化することがあり、これらの精油にエストロゲン(女性ホルモン)作用があると考えられている(米国立がん研究所「アロマテラピーと精油類」=渡部和男氏のサイトに渡部訳が掲載されている)。
(注6)ヨーロッパにはフランス規格協会(AFNOR)の規格など、信頼性の高い規格がある。
(注7)本物の精油を入手するには、瓶のラベルに少なくとも「学名」(ラテン語)と「ロット番号」(産地や製造年などを調べられる管理番号)が記されているものを選ぶ必要がある。
(2017年9月8日号に掲載)
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