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「君が代」不起立での都教委の減給処分は「裁量権の逸脱・濫用」
2017年10月3日12:24PM
卒業式や入学式の「君が代」斉唱時に起立せず、戒告、減給、停職の懲戒処分を受けた東京都立学校の教員と元教員14人が処分の取り消しを求めた裁判で、東京地裁(佐々木宗啓裁判長)は9月15日、戒告は違法ではないとしたが、6人の減給と停職は「裁量権の逸脱・濫用」を認めて取り消した。
最高裁は2012年の同様の訴訟で、「戒告を超えて減給以上の処分を選択するには慎重な考慮が必要」とし、戒告は違法ではないとしたが、減給処分は取り消した。
だが、最高裁判決後、東京都教育委員会が原告の都立特別支援学校教員、田中聡史さん(48歳)の4回目と5回目の不起立に減給処分を科したことが焦点だ。
今回の判決について田中さんは、「最高裁判決後の私の不起立に都教委は見せしめのように減給処分を科しましたが、私にとって君が代斉唱は平和的に生きる権利の否定であり、民族差別を肯定する行為。今日の判決が戒告を含むすべての不当処分の取り消しにつながることを願います」と話した。
原告側弁護団は、都教委が最高裁判決後に給与制度を変更、戒告でも経済的に変更前の減給処分以上の不利益になると主張したのに戒告を容認した点を「行政権の裁量統制の放棄」と批判、他方「不起立の回数のみを理由とする加重処分を断罪し、(君が代不起立で)全国で唯一停職処分まで選択した都教委の暴走に歯止めをかける」点は評価する声明を発表した。
同様の訴訟の原告だった花輪紅一郎さんは、「今回の判決は、減給や停職の取消基準が、本人の真摯な信条と式での混乱の有無という二つの事実認定可能な条件であることを示した点が注目されます。不起立の回数が一定限度を超えたら減給や停職が許されるかのような都教委の解釈は否定されました。これが判例として確立すれば全国の関連裁判や後続訴訟にも良い影響が及ぶでしょう」と話した。
(永尾俊彦・ルポライター、9月22日号)