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小池都知事で学ぶ(小室等)
2017年10月4日10:56AM
メディアにかかわる仕事をしている二人の女性は、関東大震災時の、決して少ないとは言えない人数の朝鮮人が惨殺されたという事実を今日まで知らなかったそうで、そのことを知ったのは、小池百合子都知事が「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式」に都知事名での追悼文を送るのを断った、という報道によってであったという。
歴史的事実を、僕と親子ほども歳が離れているとは言え、そのことを知らないまま今に至ることに驚きつつ、別角度から見れば、今回の小池都知事追悼文断り報道は、図らずも、きっとほかにもたくさんいると思われる、知らなかった人たちにそれを知らしめる結果を招いたわけで、動機はともあれ、誠に願わしい出来事だった。
あれ、この言い方、「何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目」発言に似ちゃってる? それでは撤回。いや、これも「発言が誤解を招いたことは遺憾なので撤回」しちゃう発言、永田町界隈で大流行の「撤回やり逃げ術」に似ちゃってるから、これも駄目。あの人たちが破壊の限りを尽くしている、言葉を、日本語を。
二人の女性が知らなかったことに驚いたと言ったが、かくいう僕も三〇過ぎまで何も知らなかったので人のことは言えない。
世の中を意識的に見るようになるきっかけは矢崎泰久編集長の『話の特集』だったが、それもまだ面白がっているだけだった。政治的なこと、社会的なことに目が向くようになったのは矢崎さんたちがはじめた革自連(革新自由連合)の活動に参加してからだ。
旅先のホテルの部屋に参加呼びかけの電話をかけてきたのが中山千夏さんで(どうして大阪のホテル逗留を突き止めたのか。千夏さんにそんなノウハウがあるとは思えないから、矢崎さんだね)、当時、千夏さんはわが尊敬するジャズピアニスト佐藤允彦さんの結婚相手だったので警戒心もないまま受諾してしまったのだった。
政治活動については別の機会にゆずるとして、革自連の運動の中で、環境学者・公害問題研究家の宇井純さんから水俣病を学び、石牟礼道子さんや熊本大学の原田正純さんにもお会いでき、原子核物理学者・反原発活動家・救援連絡センターの水戸巌さんに出会えて優しさを根底にしたラディカルを知り、千夏さんにウーマンリブや死刑廃止運動を教えられた。たくさんのことを学び、失敗も経験した革自連は、僕の学校だった。
物事を少しずつだけど知っていくのはかなり歳を喰ってからで、二人の女性を驚く前に、自分を驚け、なのでした。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、9月8日号)