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緊急対談 
衆院選で問われる日本政治の新しい対決軸、
リベラル陣営のリアリズムとは
(山下芳生×中島岳志)

2017年10月14日4:40PM

脱原発、対米従属からの脱却、安倍9条改悪反対というリアリズム

中島 原発についても同じで、保守の人間は原発なんてそう簡単に推進できない。少なくとも福島における伝統、慣習っていうものの総合体を失っているわけですよね。大量破壊兵器や原発は慎重に避けるべきであるというのが保守の叡智であると思うんです。つまり原発は廃止したほうがいいということになる。ここの考えも現在の共産党と一致していると思いますが、それは、ある種の科学万能主義っていうところから、共産党も変わってきているからだと思います。

山下 原発の焦点は今、再稼働の問題です。希望の党の小池さんは「原発ゼロ」を目指すと言う反面、原子力規制委員会が認めた原発は再稼働させるとも言っている。しかし、規制委員会の規制基準というものが、いかにいい加減なものか。そもそも福島第一原発事故の原因さえ究明されていないんですから。

共産党は、ただちに「原発ゼロ」の政治決断を行ない、再稼働させずに、すべての原発を廃炉のプロセスにのせるべきだと考えています。3・11をきっかけにして2013年から約2年間、国内の原発が一基も動かなくても電力は足りていたわけですから。原発なしでも日本社会はやっていける。本当に「原発ゼロ」を目指すなら、再稼働は必要ありません。

私は希望の党の「排除の論理」も気になっています。先ほど話した若狭さんと同席した討論番組の中で、彼は選別基準を二つ示した後に、「私は検察官出身。嘘を見抜くプロだ」とニタニタしながら言ったんです。ゾッとしました。かりにもこれから同じ党の同志になろうという人に対して発する言葉なのかと。一人ひとりを大事にして、包摂していく政治や社会を作ることができるとは思えません。

これが永住外国人の地方参政権反対という主張にもつながっている。永住外国人は納税もしているわけですから、地方参政権を付与されるのは住民自治の見地からも当たり前です。これに反対する小池さんが、東京オリンピック・パラリンピックを主催することの矛盾も感じます。

中島 そういった主張を聞いていると、どこが「寛容な保守」なのかと思いますよね。

山下 もうすでに「寛容」でないことは見透かされつつありますが。

中島 日米関係については、本来の保守は基本的に、米国の従属に対して主権を取り戻せという立場です。日本の国土の中に実質的な治外法権の場所があるというのは、半独立国であるということ。さらに現状のまま集団的自衛権を認めるとなると、日米安保は完全な不平等条約になります。日本は米国を守らなくていい代わりに、基地を提供し、思いやり予算を提供してきた。

しかし、集団的自衛権が双方向的なものであるということになると、バーターが成り立たなくなる。日本に米国の軍事基地が残るという不平等性が顕在化する。なんで保守派を称する人たちが、喜んで不平等条約を抱きしめているのか。

山下 対米従属の問題を考える時、その「米」の世界戦略が今どのような状況に陥っているのか、検証する必要があると思います。01年のイラク戦争、03年のアフガン戦争は、数十万人の市民の命を奪い、泥沼の内戦を作り出し、「テロ」を世界中に拡散させて、IS(「イスラム国」)のような過激な武装組織が出現する要因となった。世界にこうした状況をもたらした米国の軍事的覇権主義は大破綻しています。その破綻した米国のやり方に追随していくのが安保法制です。そこに未来はあるのでしょうか。

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