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日テレ、安倍政権に忖度して番組改変か(横田一)
2017年10月20日7:00AM
10月9日放送のNNNドキュメント(日本テレビ系列)で、安倍政権に忖度(そんたく)したと思われる番組改変事件が起きた。「『放射能とトモダチ作戦』 米空母ロナルドレーガンで何が?」と題し、東日本大震災で被災者を救援した米軍「トモダチ作戦」参加兵士が、「福島第一原発事故による放射能被曝で健康被害が出た」として東京電力などを提訴していることを紹介した番組だったが、昨年5月に米国で被曝兵士にヒアリング後、支援基金を設立(約3億円寄付)した小泉純一郎元首相が登場する場面がすべてカットされたというのだ。
この訴訟を当初から支援、小泉元首相に訪米を勧めたジャーナリストのエイミー・ツジモト氏(日系4世で被爆2世)が訴える。
「東電を訴えた米兵や弁護士を紹介するなど番組制作に全面的に協力してきましたが、放送10日前の9月29日になって日本テレビの担当プロデューサーから『今回放送の番組の中の小泉氏の登場シーンは全てカット』とメールで伝えられました。“改変前”の放送予定番組には、記者会見で涙を流した小泉元首相の訪米の様子や、兵士が小泉氏に感謝の気持ちを述べる場面もあったのに、“改変後”はすべて削除されてしまったのです」
同番組の担当者は削除の経過をメールでこう説明している。
「本日二度目の(中略)プレビュー(放送前視聴)が行われました。そこで、日本テレビ報道局の総意として以下の業務命令が出ました。『今回放送の番組の中の小泉氏の登場シーンは全てカット』というものです」
「放送法では『公示期間中』に限定されているのですが、小池=小泉は影響が大きすぎて期間直前でもだめだという局の判断との事。結局、日テレ報道の魂は『ABに忖度』という事なのです」
これに続き、「選挙が目前である事」「希望の党が脱原発を公約、選挙の争点にした事」「希望の党設立の会見後に小池・小泉が会って協力を臭わせた事」「小泉氏が(小池氏を)応援する事にでもなると、放送直前の直しが間に合わなくなり、放送に穴が空くから」などの削除の理由が列挙され、「守りきれませんでした。申し訳ありません」との言葉で結ばれている。
選挙報道原則を拡大解釈
「ABに忖度」とはもちろん安倍政権のことだろう。「小池=小泉は影響が大きすぎて」などとあるように、安倍政権に過剰なまでに忖度した“自主的検閲”といえる。選挙中の公平報道原則を、期間も内容も自分勝手に拡大解釈し、被曝兵士救済に動こうとしなかった職務怠慢の安倍政権のマイナス材料を削除したとしか見えない。その結果、有権者に投票の判断材料となる情報を与えずに国民の知る権利を奪ったのだ。
小泉元首相は訪米後、外務省に被曝兵士の実情を報告したが、日本政府(安倍政権)は動かなかった。そこで原発ゼロ社会実現を目指す仲間とともに小泉元首相は昨年7月、支援基金設立を発表。講演会参加費をすべて基金に回す全国講演行脚をボランティアで続けながら、原発ゼロ実現と被曝兵士救済をセットで訴えた。その結果、当初の目標の1億円を超える3億円が集まることにもなったのだ。
「被曝兵士が今回の番組を見たら『なぜ支援基金を作った小泉元首相が出てこないのか』と全員が首を傾げるでしょう」とツジモト氏。
原発推進で被曝兵士にも無関心な安倍首相と、脱原発で被曝兵士救済に奔走した小泉元首相の違いを知った上で、原発問題が大きな争点となった総選挙の投票行動の判断材料にすることは何ら問題ないはずだ。事実をありのままに有権者に伝えることになるからだ。
しかも小泉元首相は原発ゼロの政策の正しさは訴えても、選挙で特定の政党や候補者の応援をしない考えを繰り返し表明していた。日テレ上層部はありえない選挙応援の事態を妄想、被曝兵士救済に動かなかった安倍政権の職務怠慢を隠蔽したともいえる。これこそ、自民党に肩入れをする偏向報道に該当、多角的な情報提供を定めた放送法違反ではないか。日本テレビの対応が注目される。
(よこた はじめ・ジャーナリスト、10月20日号)