総選挙で沖縄の声は届いたか、米軍ヘリ墜落事故に怒りと抗議
2017年10月30日1:35PM
これでも「辺野古」を選挙の争点にしないのか――。米軍の大型輸送ヘリコプターCH53が沖縄県東村高江の民家から約300メートルの集落近くに墜落、炎上した翌日(10月12日)、首都圏の市民有志が東京・永田町の参議院議員会館内で緊急会見をした。夜には、「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」が防衛省に対し、今回の事故の「原因究明、責任の所在を明らかにすることを求める」とする抗議文を提出。他の市民団体も含め約100人が東京・市ヶ谷の防衛省前で抗議の声を上げた。
「国難」と称して森友・加計疑惑の追及から逃げるように衆院解散に打って出た安倍自民党にとって、大型輸送ヘリ墜落は選挙突入直後の想定外の事態だ。「この国を、守り抜く。」と謳う同党のキャッチフレーズはブーメランのように跳ね返り、「沖縄は守り抜かないのか」との批判を浴びている。
同日会見をしたのは、「沖縄への偏見をあおる放送を許さない市民有志」の川名真理さん、「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」共同代表の宮平真弥さん、「沖縄環境ネットワーク」世話人の花輪伸一さん、「ピースボート」共同代表の野平晋作さんら。辺野古新基地建設について「争点にしてくれる政党とそうでないところが二極化してきた」(川名さん)とし、辺野古基地に反対する有志12人の連名で、立憲民主党に「要望書」(10月11日付)を送付したことを報告。「立憲の旗の下に集まる、貴党をはじめとする野党共闘に救いを見いだし期待を寄せる」とし、選挙の争点にするよう訴えた。
今回の総選挙での各党の公約を見ると、辺野古新基地建設について明確に「反対」しているのは日本共産党と社民党で、立憲民主党は「再検証。ゼロベースでの見直し」を打ち出している。「推進」の立場をとるのは自民党と日本維新の会、それに希望の党だ。希望の党は「日米同盟を深化させる一方、基地負担軽減など地位協定の見直しを求める」などとしているが、要するに推進である。公明党は公約には言及せず、安倍政権と一体となり推進してきたにもかかわらず、?被りする小ずるさだ。
また、今回の選挙後の「改憲」が問題となっていることに対し、「沖縄では米軍基地があることで平和、自治、人権、環境が破壊され、日本の政府、政治はこれを容認してしまっている」(花輪さん)とし、すでに沖縄では差別的な日米地位協定を含み、憲法がなきに等しい状況にあることを指摘。「一ローカルの問題ではなく、7割の基地を押しつけている全国の問題だ」(野平さん)と訴えた。
【多発する沖縄の“国難”】
翁長雄志沖縄県知事が「沖縄にとって国難」と断腸の思いで述べた今回の大型輸送ヘリ墜落事故は昨年12月のオスプレイ墜落事故(名護市安部海岸)から1年も経たずに発生。このヘリは04年に沖縄国際大学に墜落したのと同系統の機種だ。また、オスプレイは今年6月、伊江島補助飛行場や奄美空港に緊急着陸し、8月5日にはオーストラリア東部沖合で墜落し乗員3人が死亡。沖縄県議会がオスプレイ配備撤回や海兵隊撤退を求める抗議決議(8月28日)した翌日には、またまた大分空港に緊急着陸した。防衛省はそのつど、お題目のように「再発防止に努める」などと空疎なコメントを出すが、事故や事件は一向に減らない。
昨年4月の元海兵隊員の米軍属の男による女性強かん、殺人、死体遺棄事件は記憶に新しいところだが、沖縄返還の1972年以降2011年末までに米軍航空機の関連事故は522件発生。米軍人・軍属とその家族による刑法犯罪の検挙は14年までの42年間で5862件、うち殺人・放火・強かんの凶悪事件の検挙者数は737人に上る(『沖縄タイムス』16年5月20日付)。政府は「日本を守るために米軍基地が必要」とするが、その米軍基地が沖縄の人の生命と暮らしを脅かしている現状だ。
衆院選は22日に投開票となるが、「辺野古」を争点にしない政党に民主主義や憲法を語る資格はないだろう。
(片岡伸行・編集部、10月20日号)