【タグ】伊勢音頭|増田喜昭|小室ゆい|川喜田宗久|河合隼雄|河野俊二|谷川俊太郎|谷川賢作
希望というのは(小室等)
2017年11月5日10:00AM
このコラムで、増田喜昭さんに触れたことがあったかな。増田さんは三重県四日市市の子どもの本屋「メリーゴーランド」の主であるが、谷川俊太郎さんや故河合隼雄さんなど、増田さんが企画するイベントの常連ゲストは数えきれない。ちなみに灰谷健次郎作『天の瞳』で主人公倫太郎が慕うあんちゃんのモデルは増田さん。
一〇月八日、「松本山“ちんじゅの森”コンサート」へゆいと谷川賢作(ピアノ)、河野俊二(カホン)の四人で行ってきた。
四日市市松本地区松本神社。子どものころから親しんだ場を守ろうと、地元の有志一三人が「松本山ちんじゅの森の会」を結成。代表は山下邦男さん、増田さんも実行委員の一員。二〇〇一年の一回目は篠笛奏者の狩野泰一さん、翌年はプロの獅子舞が登場し、三年目はドイツ人の尺八奏者ウベ・ワルターさんと続き、僕は〇八年の第六回からゆいと呼ばれて以来、賢作、ゆいのほかに八木のぶお(ハーモニカ)、田中邦和(テナーサックス)諸氏のその時折の参加を得て、今年第一五回で多分六回の出演。おおたか静流さんも複数回だ。
松本山はかつて、子どもたちの遊び場だったが、気がついたら子どもの姿は消えていた。このコンサートは、子どもたちが喜ぶことのできる場を取り戻そうと、一五回目を迎える今年も、有志らが協力して竹を切り出し、四〇〇以上の竹灯籠をつくり、神社に上る一一〇段の階段の両脇に並べる。
会場の椅子は、近くの学校から五〇〇脚以上のパイプ椅子を借りてきて並べる。運搬は、地元で整備工場を営む幼馴染がトラックを出し、ほかにも米屋、魚屋、山下代表は常磐精機の社長、その他たくさんの大人たち(融通がきく自営業が多い)と子どもたちが力を合わせる。さらに大人たちは、運営費も協力し合う。無料コンサート当日はカンパも。つまり形を変えてもうひとつの祭りの誕生だ。
そういえば、増田さんの祖父は大工で、この神社を建てる際、あらためて宮大工の勉強を京都かどこかでしてきて建立に貢献。たしかそのお祖父さんが彫った彫り物が今も神社のどこかに。土地のDNAが松本山に浸みこんでいる。
楽器運搬の軽トラに楽器ケアのため乗ってくれた青年、見覚えのある顔。そう、〇一年に中学生で参加した太鼓と篠笛の上手かった中学生、川喜田宗久さんだった。宗久青年、今は消防団員。なぜなら木遣りがやれるからだと言う。打ち上げの締めに僕の指名で「伊勢音頭」を歌ってもらった。
地のDNAは、あの日の中学生の中で息づいていた。希望というのはそのようなところに宿る。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、10月20日号)