『広辞苑』、「フェミニズム」「フェミニスト」の定義を変更へ
2017年11月7日6:46PM
岩波書店は10月24日、来年1月の『広辞苑 第七版』刊行を発表。この版で「フェミニズム」「フェミニスト」の語釈を変更するという。
現在の「第六版」では、「フェミニズム」の説明が「女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動。女性解放思想。女権拡張論」で、「フェミニスト」の説明は「女性解放論者。女権拡張論者。俗に、女に甘い男」となっている。
これについて、男女平等を求める若手フェミニストのアーティストグループ「明日少女隊」が今年5月、「女権拡張論者は、女性が男性以上の権利を求めていると解釈されやすく、実際にこの広辞苑の語釈を引用して、フェミニズムを女尊男卑の思想であると結論づける人が後を絶ちません」、また「俗に、女に甘い男」は、「日本だけで誤用されている用法です。それだけでなく、これらはフェミニストの理念を大きく歪めるような用法であり、語の理解を妨げています」などとして「広辞苑の第七版では、(フェミニズムが)『あらゆる性の平等を目指す思想・運動』であることが分かるように語釈を書き換えてください」「(俗に、女に甘い男)は削除、もしくは誤用と明記してください」と求める公開書簡を、岩波書店の岡本厚代表取締役と辞典編集部宛に送付。その後6月からオンライン署名を始め、6200筆以上を集めた。
表記変更に書簡の影響があったのかを同書店辞典編集部に聞くと「多くの方からの質問や意見を参考にしている、という返答になる。刊行後、内容を見て判断してほしい」とのこと。
「明日少女隊」の尾崎翠さんは「岩波書店にオープンレターを提出した後、すぐにお返事をいただけたのはとても嬉しく、光栄でした。しかし、お返事は『参考にさせていただきます』という短いものでした。私たちは、『広辞苑』のフェミニズムとフェミニストの定義は、次世代へネガティブなジェンダー観を残してしまう深刻な問題があると考えておりますし、『広辞苑』の筆者の皆様に、この問題を真剣に考えていただきたいと考えています」「多くの人たちにこの問題を伝え、日本で『フェミニズム』や『フェミニスト』の定義を考える一つのきっかけを作り、署名という形で岩波書店に届けたいと考えました」と話す。
『広辞苑』第七版刊行での定義見直し報道を受け、同グループは「嬉しいニュース」と喜びながらも「実際に辞書の定義が、私たちの求めるものになるまで継続することを考えている」としている。
(宮本有紀・編集部、11月3日号に加筆修正)