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官僚が苦り切る「杉田機関」が継続(西川伸一)

2017年11月25日6:00PM

11月1日に第4次安倍晋三内閣が発足した。安倍首相は全閣僚を再任したのに続いて、横畠裕介内閣法制局長官など特別職16人も再任した。ここで私が注目したいのは、杉田和博内閣官房副長官(事務)も再任されたことだ。

閣議には首相はじめ各大臣が出席する。加えて内閣官房副長官(政務)2名と、いずれも非議員の事務副長官および内閣法制局長官の合計4名が陪席する。事務副長官には旧内務省系の省庁の事務次官経験者が多く就いてきた。「官僚首座」とも「影の総理」とも言われるポストで、閣議では閣議案件を説明する。それゆえ事務副長官がいないと閣議が開催できない。

その職務については、歴代最長の8年7カ月在任した古川貞二郎氏がこう回想している。「総理官邸の事務方トップである内閣官房副長官の職務は緊張と激務の連続である」(古川貞二郎『私の履歴書』日本経済新聞社)。「副長官というのは二十四時間体制。遠くに出かけることもできない。(略)在任中に東京を離れたのは休日を除くと合わせても十四、五日ぐらいだろう」(同『霞が関半生記』佐賀新聞社)。

古川氏もその前任者で7年3カ月務めた石原信雄氏も就任のあいさつ回りをしたところ、血尿が出るぞと脅されたという。

さて、現副長官の杉田氏は現在76歳である。古川氏が副長官を退いたのが69歳、石原氏は68歳であった。杉田氏は第2次安倍内閣発足とともに71歳で就任している。その高齢ぶりは際立つ。

警察庁出身で同警備局長を務めたあと、内閣情報調査室長、次いで初代内閣情報官に就いた。2001年4月には内閣危機管理監となった。このとき安倍首相は第1次小泉純一郎内閣の政務副長官だった。官邸でともに働いた間柄になる。杉田氏には後藤田正晴、藤波孝生両官房長官に秘書官として仕えた経歴もある。そこで「杉田以上に官邸を知り尽くす人はいないといわれる」(15年8月27日付『産経新聞』)。

官邸ばかりか、警備局長上がりだけに霞が関全体にその情報網は張り巡らされているようだ。一部では「杉田機関」と恐れられていると漏れ聞いた。たとえば、16年9月ごろ、前川喜平文科事務次官(当時)は、杉田氏から「こういうところに出入りしているそうじゃないか」と出会い系バー通いを注意された(17年6月9日号『週刊朝日』)。

官僚のプライベートにまで目を光らせているのだ。その杉田氏が官僚の幹部人事を取り仕切る内閣人事局長を今年8月から兼務している。彼の再任に苦り切っている官僚たちも多いのではないか。後期高齢者となってもこの激職に起用され続けようとは。

杉田氏のみならず、麻生太郎副総理兼財務大臣は77歳、二階俊博自民党幹事長は78歳、高村正彦自民党副総裁は75歳である。ジジイたちに支えられている安倍政権に、36歳の小泉進次郎自民党筆頭副幹事長の直言が小気味よい。選挙運動を通じて「今回おごりゆるみだけでなくて、全国で感じたことは『飽き』ですね」(10月23日付「NHKニュース」)。教育無償化の財源を首相が産業界に求めたことについて「全く党で議論していない」、自民党大勝には「獲得議席数ほど党の信頼は回復していない」(11月3日付『日本経済新聞』)。ゆめゆめ「杉田機関」に足元をすくわれないように!

(にしかわ しんいち・明治大学教授。11月10日号)

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