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安倍後をにらんだ動きが公然化(佐藤甲一)
2017年11月27日6:40PM
自民党内で気になる動きが、しかも「有力議員」の間で続いている。11月7日、野田聖子総務大臣が記者会見で、地元・岐阜で「政治塾」を立ち上げることを表明した。これだけなら、小池百合子東京都知事の「二番煎じ」に見えるが、その塾生から男性を「排除」し、女性だけの政治塾を立ち上げると説明した。その理由として、先の衆議院選挙で自民党内の女性議員の比率が低下したことを挙げた。
野田氏は、まずは来年春に岐阜で立ち上げた上、いずれ全国展開する考えを示した。野田氏は前回の自民党総裁選挙で立候補を目指したが推薦人を集めきれずに断念した経緯がある。野田氏は当選9回にして57歳、むしろ、次の次まで視野に入れた動きと見ていいだろう。女性の政治進出の必要性が指摘されるのは何も今に始まったことではない。野田氏の動きを画一的な「女性活用」の視点で見ていては、その影響を見誤る。
民進党が立憲民主党、希望の党、無所属の会、参議院の民進党に4分裂したことは、非自民票がおおむね革新リベラルと保守リベラルに分けられたことを意味する。自民党にとって保守リベラルの希望の党をどのように取り込んでいくかは、憲法改正を目指していく上で喫緊の課題だ。
しかし、希望の党ぐるみの協力を得ていくとすれば、また対価も支払わねばならない。安倍晋三首相がそれを目指すのは勝手だが、次の次を視野に入れた野田氏からすれば、どう野田シンパの政治勢力を増やすかが重要だ。頭を悩ませているところに、手つかずの保守層が誕生したのである。
希望の党の比例得票は約967万票。つまり500万票の保守女性票の存在が明らかになった。野党を切り分ける軸は、今は「政治姿勢」ではなされているが、そこに「女性」という網をかけ直した場合に、女性保守政治家・野田聖子氏に集まる野党の保守リベラル層は出てくるのか出てこないのか。自民党内にあらたな女性保守リベラル層を取り込めば野田氏の有力な支持母体となり、総理総裁への道が開けるかもしれない。
もうひとり、小泉進次郎筆頭副幹事長の言動も注目に値しよう。安倍首相が教育無償化の財源として、産業界に3000億円の拠出を求めたことを問題視した。「首相と財界が握っ」たと切り捨て、重大な政策決定が自民党内での議論を経ずに安倍首相の「専断」でなされていることを非難した。当然の指摘だ。首相の言う「謙虚」とはただの舌先三寸であることを早くも証明してしまった。
ただ、見落とせないのは、小泉氏は政策決定のプロセスが「議院内閣制」の趣旨を逸脱しており、政党政治を蔑ろにする首相の手法を非難したにすぎず、財界との「握り」そのものを非難したわけではない。財界が内部留保をはき出せば、結果として労働者の賃上げに影響が出て、庶民の実質増税につながることには触れていない。取りやすいところから取る、自らが提唱する「こども保険」の底意と同根だからであろうか。
それぞれの思惑はさておき、自民大勝は「安倍一強」政治のさらなる強化には結びつかなかったことは確かである。自民党内の「ポスト安倍」の動きが公然化し始めたと言っていい。それにしても共闘どころか分裂の度合いを日々広げる野党の体たらくが情けない。
(さとう こういち・ジャーナリスト。11月17日号)