「おおすみ」艦橋「避けられん」 海自側衝突1分前に認識か
2017年11月30日5:28PM
海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」(8900トン)と釣り船「とびうお」(5トン未満)が瀬戸内海上で衝突、とびうおの船長と乗客の2人が死亡した事故(2014年1月15日発生)をめぐって遺族らが起こした国家賠償請求訴訟の第7回口頭弁論が、10月31日、広島地裁(龍見昇裁判長)であり、衝突の約1分前に「おおすみ」乗員が「避けられん」と発言していた事実を国側が認めた。
問題の部分は「おおすみ」艦橋で採られた録音のうち、衝突約1分前にあたる午前7時59分6秒。衝突は避けられないという意味に聞こえる。運輸安全委員会や海上自衛隊の調査で使われた書き起こし記録からは落ちており、遺族側弁護団(田川俊一団長)が指摘していた。
「おおすみ」が危険を認識した時期について国側はこれまで、衝突約30秒前まで危険はなかったが「とびうお」が突然右に舵を切ったために衝突したなどと主張。しかし、今回の「避けられん」発言で、少なくとも約1分前には危険を自覚していたにもかかわらず回避措置を採らなかった可能性が浮上した。
弁護団は「避けられん」のほかにも、「GのCPA46」(「とびうお」との最接近距離は46メートルまたはヤード)、「やばい」などの発言が艦橋内で聞き取れると指摘したが、これらについては国は否定している。録音状態が悪いため、弁護団は専門家による音声分析を行なう方針。
次回口頭弁論は来年1月12日午後3時、広島地裁で開かれる。
なお本誌10月27日号掲載の「おおすみ」関連記事で、同艦の最高速度を約17ノットとした点について、読者より「防衛省の公表データは22ノットとある」との指摘を受けた。これは、運輸安全委員会の調査報告書に記載された「おおすみ」の運動性能表(変速標準表)に従って表記をしたことによる食い違いである点、お断りしておく。
(三宅勝久・ジャーナリスト、11月17日号)