【「香害」最前線】 ファブリーズ
除菌成分「QAUT」に
新たな毒性
岡田幹治|2017年12月1日4:28PM
――そうした危険性に加え、アメリカ・バージニア工科大学のテリー・フルベック教授らが新たな毒性を明らかにしたのですね。
研究を始めたきっかけは、研究室の飼育かごの洗浄剤をQUAT含有のものに変更したとたんにマウスの出産率が低下したことです。
驚いた博士らはまず生殖毒性について調べ、QUATに曝露したメスマウスは出産数が少ないことを2014年に発表。15年には、QUATに曝露したマウスでは、オスの精子が減少し、メスの排卵が少なくなるなど繁殖力が落ちることを報告しています。
続いて今年7月、QUATに曝露させたマウスから生まれた仔マウスは、二分脊椎症や無脳症といった「先天性異常(欠損)」(注5)が多いと発表しました(注6)。
教授らは、塩化ベンザルコニウムと塩化ジデシルジメチルアンモニウムという2種類のQUATを用い、それらを「餌に入れて食べさせる」「チューブを通して服用させる」「それらを含む消毒薬を飼育室で使う」という三つの方法で曝露させた結果、次のことがわかりました――。
①曝露されたオスとメスのマウスから生まれた仔は先天性異常の比率が高く、その現象は曝露をやめた後、2世代にわたって引き継がれた。
②オスだけに曝露させ、メスには曝露させなかった場合でも、仔の先天性異常の割合は高かった。
③QUAT含有の消毒薬を飼育室で使った場合でも同じ現象が見られ、先天性異常の発生率は別の消毒薬では0・1%なのに、QUAT含有の消毒薬では15%にもなった。
――①②③とも衝撃的な結果ですが、あくまでマウスを使った実験です。
その通りですが、教授は「動物実験は人への健康影響を予測する確固とした基準」であると強調しています。「次の研究ではQUATと人との関連を検証する」とのことです。
――ファブリーズのような消臭除菌スプレーの危険性がよくわかりました。乳幼児や妊婦のいるところでは絶対に使ってはいけませんね。
車のエアコンにつけて車内に成分を充満させるのは、とくに危険です。