“無農薬”をうたう
植物工場の野菜から
基準値の17倍の農薬が検出!
植田武智|2017年12月15日1:05PM
ピレトリンは農薬としても登録
確かに農薬取締法で定める農薬とは、農作物を害する虫や菌の防除のために使う薬剤と定義されている。
発生した害虫は「チョウバエ」という虫で、家庭の風呂場や台所、食品工場の排水設備などに発生する不快害虫とのこと。ベビーリーフには害はなく、工場の衛生管理のため使用したので農薬には当たらない。
しかしピレトリンは農薬としても登録されており残留基準も定められているため、食品から基準値を超えて検出されたら食品衛生法違反となる。
直接野菜にかけたわけでもないのに、なぜ基準値の17倍もの殺虫剤が残留してしまったのか?
三菱ケミカルによると「原因はまだ調査中で判明していない」とのこと。
現在(2017年12月現在)でも製品の出荷は停止されたままである。
気になる健康への影響については、三菱ケミカルの説明では、「キュアリーフ」一袋当たりの残留量では、大人のピレトリンの1日当たりの摂取許容量(ADI)の30%程度なので問題はないとしているが、子どもでは1.2袋(ベビーリーフとして33.6g)以上でADIを超えてしまうので、まったく食べられない量でもない。
三菱ケミカルは自社工場で野菜を栽培するだけでなく、植物工場プラントの販売も事業化しており、おしゃれなカフェやレストランでもディスプレイの一つとして店内栽培し、野菜サラダとして提供するお店なども出てきている。
栽培はコンピュータ管理で、日常の作業はマニュアル化されており、農業経験のない人でも簡単に栽培できると宣伝している。その自社工場のプラントで、うっかり使った殺虫剤が野菜に残留するとは大きなダメージになるだろう。
植物工場の野菜だから無農薬で安全、とは無条件には言えなくなった。
(植田武智=うえだ たけのり・科学ジャーナリスト。『週刊金曜日』2017年12月15日号掲載)