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トランプの北朝鮮政策で危機にさらされる日本だが首相の対応に自民党内は楽観
2017年12月25日5:00PM
トランプ米国大統領に近いとされる共和党の重鎮、グラハム上院議員の発言が日本にも波紋を広げている。「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との戦争になれば韓国や日本などで100万人規模の犠牲が出かねない」というCNNテレビでの質問に、「大統領は(日本や韓国の北東アジア)地域より米国を選ぶ」と答え、「北朝鮮のICBM級核ミサイルの完成前に米国は、日本に100万人規模の死者が出る恐れがあっても軍事オプションに踏み切る」とのトランプ政権の方針を語ったのだ。
しかも日韓が“捨て石(盾)”となる「米国本土防衛作戦(軍事オプション)」は、既に米国内にかなり浸透、可能性がさらに高まっているとの見方がある。
「『12月開戦説』への備えはどうする?」と銘打ったネットテレビの「みのもんたのよるバズ!」(9日放送)で明治大学の海野素央教授は、共和党支持者へのヒアリングで「申し訳ない。米国本土優先で日本が犠牲になる」と謝罪された話を紹介。トランプ政権の支持率低迷、イスラエルのエルサレム首都認定への国際的批判が重なって、「局面打開のために北朝鮮攻撃に傾きかねない」と分析した。
にもかかわらず、安倍首相は「米国第一・日本国民二の次」としか見えない属国的対応を続けている。「北朝鮮問題で日米は100%共にある」と繰り返すだけで、「韓国の事前同意なき軍事オプションは許さない」と米国に物申す文在寅大統領とは対照的なのだ。
それでも首相批判は自民党からは聞こえてこない。野党議員のパーティで中谷元・元防衛大臣を直撃、軍事オプションへの安倍首相の対応について「拒否するのか」と聞いたが、「そうならないようにやっています」という楽観論しか返ってこなかった。
トランプ大統領にNOと言う覚悟を問われても無回答だったのに「晋三・ドナルド関係は世界一」と称賛した山本一太参議院議員(先週号で紹介)と二重写しになったのは言うまでもない。
【希望と都知事の連携は?】
野党はどうか。「先制攻撃は国際法違反。認められない」と指摘した枝野幸男・立憲民主党代表は安倍首相の対米従属ぶりを批判したが、大塚耕平・民進党代表もグラハム上院議員の発言について、安倍首相に「米国は『自国の利益を犠牲にしてでも他国、たとえば日本の利益を守る国だ』と思っているのか」と聞いても明確に答えなかったと指摘した上で、「(米国第一で日本国民二の次の)不安を国民が持つのはあり得る話なので、(安倍首相)自身の考え方を可能な範囲で述べる努力を求めたい」(7日の会見)と述べた。
玉木雄一郎・希望の党代表にも5日の会見でグラハム上院議員の発言について聞くと、前回(11月26日)の会見と同様、「アメリカとすべて同じ行動をすることは結果として日本にのみ被害が及ぶ可能性があるし、わが国の国益に反する場合があるので慎重な対応が必要だと思っている」と日米の違いを強調したが、前代表の小池百合子都知事(希望特別顧問)と行動を起こすことには消極的。「死者100万人規模」という被害想定を受けて「都民の命を守る」という立場から小池都知事が玉木代表と一緒に「先制攻撃容認反対」などと官邸に申入れをする考えについて聞いたが、「特に話はしていない」と答え、小池氏との今後の面談についても明言を避けた。都政と国政から安倍政権を問い質す、希望の党に格好のテーマと捉えていなかったようなのだ。
米国軍事オプションを当然とする意見も元防衛官僚から出ている。徳地秀士・元防衛審議官は10月30日、北朝鮮問題のシンポジウムで「『我々はアメリカの軍事行動を回避することを考えないといけない』ということがそもそも良くないのだろうと思う」「アメリカが軍事行動をした時に韓国も日本もそれをサポートする。本当に日本も韓国も国際社会も全体が覚悟をしている強い姿勢を見せることが大事だ」と発言していた。
今後、野党がどこまで連携して、安倍政権の米国の軍事オプション追認を阻止できるのかが注目される。
(横田一・ジャーナリスト、12月15日号)
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