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大増税と軍事力強化の責任は(佐藤甲一)
2018年1月13日5:59PM
10月の衆議院選挙から50日あまり、永田町から緊張感が失われ、今の政治に見るべきものがなくなっている。政権に批判的ながら託すべき野党もないとし、その結果自民圧勝の状況を作り出した有権者は今こそこの政治状況を凝視し、目を覚ますべきであろう。
自民大勝の結果起きたことは何か。無批判の中での大増税、防衛力いや軍事力強化、そしてチェック機能の消失=党首討論ゼロという結果である。「近親憎悪」の中で分裂した旧民進党議員に言い分もあろうが、結果は政権を監視し、政治に緊張感をもたらすという野党の役割を放棄したにすぎない。
政策よりも、権謀術数、合従連衡と批判を浴びようとも、まずは「数」で与党を圧迫することこそ、野党の責任第一ではなかろうか。はっきり言おう。議会制民主主義の下では政策ではなく、数こそ、政治に緊張感をもたらすのである。
そして、今現在も国会内ですら「野党共闘」はできていない。12月8日付『毎日新聞』は、今年最後の機会となった特別国会において党首討論が開催されない理由について「野党が多党化し、持ち時間が細分化されたため追及が不十分になるため、野党側が敬遠」と伝えている。
別の新聞では、衆院第一党の立憲民主、参院第一党の民進が野党第一党のステータスを求めて譲らず、他党も絡んで調整が付かなかったとの分析も。野党が内輪もめしているようでは、与党の政権運営は楽だろう。
来年度の税制大綱改定の内容を見れば、野党はその責任であるチェック機能を果たせていないことが明らかだ。所得増税は既定路線となりつつある。年間収入850万円以上の対象者(会社員)は200万~250万人ではあるが、この増税によって900億円が確保された。また日本を訪れる外国人ばかりか、海外旅行などに向かう日本人も課税対象の観光促進税(出国税)も当初の2019年4月導入が3カ月前倒しとなり19年1月から課税されることになった。
27年ぶりの新税は16年ベースの出国者数で換算すれば約400億円の増収となる。政府予算ではすでに経済産業省や農林水産省などが所管する観光政策に3200億円が拠出されている。「目的税」になる観光促進税との棲み分けがどのようになるのか議論不十分の中で、増収だけが先行する。
防衛力整備でもこれまでに比べて突出した「増強」が進んでいると言わざるを得ない。対艦、対地能力が格段に向上した射程500キロ以上に及ぶ日本型トマホーク・ミサイルの導入検討、さらに19日にはグアムやハワイへ向けた北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル) の軌道を捉えるため秋田、山口へのイージス・アショアシステムの配置が閣議決定される。
トランプ大統領の訪日にあたりステルス性の高いF35の導入促進を二つ返事で行なった安倍政権の「軍事力増強」はとどまるところを知らない。北朝鮮情勢が緊迫の度合いを高めているとはいえ、国会での議論なきままの政策執行は、国民が選挙でもたらした結果であると同時に、分裂を放置したままの野党全体の責任でもあろう。
2019年夏の参議院選挙を念頭に、一刻も早く、まず統一会派を組み、来年度予算のはらむ問題を組織的に追及する努力をすべきである。野党に正月休みなどない。
(さとう こういち・ジャーナリスト。2017年12月15日号)